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前代未聞の不祥事から、得るべき教訓は何か。 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

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posted2006/10/26 00:00

 ゴルフは基本的にアンパイア(審判員)が存在しない稀有なスポーツだ。ティーショットを打ってから、カップにボールを入れるまでに費やした打数を、第三者でなく、当人が「自己申告」していくのが原則である。

 ただし、同組の他のゴルファーは、そのスコアを承認するマーカーという役割を担うことになる。当人が申告したスコアカードにマーカーが確認のサインをして、はじめて正式なスコアとして成立するわけだ。

 ところが、ホールアウトしてマーカーのサインを貰ったにもかかわらず、その後にトイレに駆け込んで、3ホール分、スコアを改ざんするという事件が日本オープン最終予選で発覚した。

 改ざん事件を犯したのは、高校時代から飛ばし屋として、将来を買われてきた22歳の中西雅樹選手だった。世界一流のスポーツ選手のマネージメントを行なうIMGと契約を結んだ中西選手は、2000年の全日本パブリックアマチュア選手権優勝などの戦績を引っさげ、今季からプロツアーに参戦していた。鳴り物入りの選手が犯した前代未聞の不祥事は、プロ・アマを問わず関係者に大きな波紋を広げた。

 事態を重く見た日本ゴルフツアー機構(JGTO)は、主管するツアーへの5年間の出場停止と200万円の制裁金を科したが、除名処分を下されても決しておかしくない事件である。

 ゴルフでは常にプレーヤーの人間性が問われる。OBの境界線をわずか越えてしまったボールをセーフにしたいと思うのは、人間的な感情ではある。だが、そこでルール通りにアウトにできることが、あるべき人間の姿であるはずだ。

 球聖と呼ばれたボビー・ジョーンズは、1925年の全米オープンで、「打つ前にボールが少し動いた」と申告し、自らに1打罰を科して、優勝チャンスを逃したことがあった。ボールが動いたことを確認できたのは彼の他に誰もいなかったため、皆がその真摯な行動を賞賛したが、当人は心外そうにこう語ったという。

 「『私は泥棒しませんでした』と言われて、それを褒める人はいないでしょう? 私は当たり前のことをしただけです」

 日本ゴルフが生み出した今回の歪みを、厳しく問う言葉だろう。

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