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プロとしての社会性を示した2人のJリーガー。 

text by

浅田真樹

浅田真樹Masaki Asada

PROFILE

photograph byTakao Yamada

posted2006/02/09 00:00

プロとしての社会性を示した2人のJリーガー。<Number Web> photograph by Takao Yamada

 最後に名前を呼ばれて登壇した佐藤寿人は、最愛の妻、家族に続けて、自分が所属した4クラブすべてを挙げて(しかも正式名称で)、感謝の意を表した。昨年のJリーグ・アウォーズ、ベスト11発表での一コマである。

 なかには苦々しい思い出しかないクラブもある。だが、それも含めて、自身の成長の糧として受け止めている。そんな彼の気持ちが伝わってくる、実にすばらしいスピーチだった。受賞が5回目にもなる日本代表の常連が、「ありがとうございます」さえ満足に言えなかったのとは、比べ物にならないくらいに。

 真のプロたるもの、子供たちに夢を与える存在でなければならない。理想の姿として、しばしばそんなことが言われる。それは何もピッチ上だけに限らない。しっかりとした社会性を持ち、自分の言葉で気持ちを伝えることも、プロとしての立派な務めなのではないだろうか。となると、宮本恒靖の突出した人気も合点がいく。表彰が続く舞台上を眺めながら、そんなことを考えていると、そういえばと、ある選手のことが思い出された。

 それは、'03年春。3月にUAEで開幕予定だったワールドユースがイラク情勢の緊迫化により延期となったことで、U―20代表は当初の登録メンバーに新たな選手を加え、リスタートしていた。新加入の選手とはつまり、大会延期により、再びチャンスが巡ってきた選手たちである。彼らはきっと、幸運な巡り合わせを喜んでいるはず。私はそう考えていた。

 ところがひとり、無邪気に喜びを口にするのでなく、ひとつ前置きをしてから、自分の思いを話し始める選手がいたのである。それが、長谷部誠だった。

 「延期の理由が理由なので、単純に喜んでいいのかどうか分かりませんが……」

 正直、驚いた。19歳の、プロになりたてで血気盛んな少年が、きちんと周囲へ配慮し、言葉を選んで話したことに。

 この度、その佐藤、長谷部が揃って日本代表に初選出された。現実的には、彼らがドイツのピッチに立つ可能性はごくわずかと言わざるを得ない。それでも、彼らのような“プロ”に、こうしてチャンスが与えられたことが、単純にうれしく、また、理屈抜きで頑張ってほしいとも思うのである。彼らこそ、未来のJリーガーたちのお手本なのだから。

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