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レンジャーズ福盛の波乱で始まる挑戦。 

text by

津川晋一

津川晋一Shinichi Tsugawa

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photograph byYukihito Taguchi

posted2008/05/15 00:00

レンジャーズ福盛の波乱で始まる挑戦。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 波瀾万丈。福盛和男投手のテキサス・レンジャーズにおけるメジャー挑戦のはじまりは、こんな言葉が相応しいかもしれない。

 キャンプでは8試合で10回を投げて自責点ゼロと完璧で、クローザーとしての期待も高まった。ところが開幕戦、打者5人に対し2安打2四球3失点とホロ苦デビュー。3試合に登板しただけで、4月13日には3Aオクラホマへ降格という憂き目にあった。そこで結果を残し、わずか11日で再昇格するも復帰後初登板で2本塁打を含む3失点してしまう。そしてこれを書いている4月26日、わずか2日でまたしても降格を告げられた状況だ。

 そんな福盛を微笑ましく見つめる師匠がいる。'98年に横浜ベイスターズを日本一に導いた権藤博さん。福盛が「今の僕があるのは権藤さんのお陰。切っても切れない縁がある」と慕ってやまない存在で、3月には単身でアリゾナまで激励に訪れた。悪戦苦闘する愛弟子について権藤さんは「まあ、こんなもんでしょう」と笑う。

 権藤さんの指摘は的確だ。「顔は優しいけど、ガンガン行くのがアイツの性格。緻密なコントロールなんてないんです。『(コーナーを)狙いすぎて四球が出てます』って言うから、『バカ野郎! オマエが狙ったところに行くわけねえだろ!』って言ってやった」。そう聞くと、レンジャーズ首脳陣の「制球に課題がある。ベース上にコンスタントに配置しなければ」という福盛評も少し滑稽に思えてくる。福盛自身も吹っ切れた様子で「打たれることを怖がりすぎて2シームしか投げていなかった。今後は日本の頃のように4シームも使って、思い切り打者に向かっていきたい」と前を向いた。

 福盛は渡米に際し、ひとつのボールを持ってきた。横浜時代に権藤さんからもらったもので、そこにはこんな文字が記されている。“kill or be killed.(殺るか殺られるかだ)”。31歳のルーキーは「今はまだやられっぱなしですが、いつか」と言葉を留めた。波瀾万丈、だけど順風満帆。「上がったり下がったりしている間に、自分の力を発揮する。しぶといものを持っているから、アイツは必ず戻ってきます」。何もかもお見通しの恩師の目には、近い将来、愛弟子が活躍する姿が確かに見えている。

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