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季節外れの“桜”は咲くか。C大阪、大逆転への布石。 

text by

浅田真樹

浅田真樹Masaki Asada

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posted2005/12/08 00:00

 今季のJ1で、非常に印象的なシーンがある。8月28日、柏サッカー場。柏1点リードの試合終了直前、C大阪はファビーニョの鮮やかなミドルシュートで、同点に追いついていた。

 興味深かったのは、ここからだ。多くの決定機を逃していたC大阪は、とても引き分けで満足できる雰囲気ではなく、残るわずかな時間で、もう1点を奪いにいく気満々。ところが、である。殊勲のファビーニョだけは、のらりくらり。スローインを急ぐ味方には、両の掌を地面に向けて上下させ、盛んに落ち着けと指示している。C大阪は何となくかみ合わないまま、タイムアップの笛を聞いた。

 他の選手に近い気持ちで見ていた私は、試合後、ファビーニョに聞いてみた。あれだけ押していたのに、引き分けでいいと割り切れるものですか、と。

 「割り切るというより、細心の注意を払わなければいけないということ。常に勝ち点3を狙う姿勢は持っているが、モノにできる勝ち点1を逃してはいけない」

 Jリーグでは、終了直前に勝ち越しや同点のゴールを決めても、直後に失点して、せっかくの勝ち点をフイにするドタバタが案外多い。ファビーニョは刹那的感情ではない、長いリーグにおいて必要なメンタリティを伝えようとしていたのである。この翌節から7連勝が始まったことも、あながち偶然ではあるまい。

 7月には「1点取られただけで、ガクッと頭が下がってしまう」と、ウイニング・メンタリティの欠如を嘆いていた小林伸二監督も、「選手は明らかにたくましく、強くなっている」と、精神面の変貌に確かな自信を得ている。31節終了時、13戦連続負けなし(10勝3分け)という驚異的な追い込みで、C大阪は、ついに首位に勝ち点1差まで迫った。

 この状況に、(なぜか)思い浮かぶのは、'90年の菊花賞である。1番人気は皐月賞3着、ダービー2着で、最後の一冠に賭けるメジロライアン。だがレース後、実況アナは叫んでいた。「メジロはメジロでも、マックイーンの方だ!」。勝ったのは、4番人気の条件馬だった。

 今季のJ1もゴール目前。関西勢初制覇の期待はG大阪に集まる。だが──。

 「大阪は大阪でも……」

 よもやの可能性を秘めたまま、まもなくJ1はクライマックスを迎える。

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