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ヘビー級チャンピオンの息子が狙う新たな標的。 

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前田衷

前田衷Makoto Maeda

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posted2004/09/22 00:00

 最近は「親子ボクサー」ばやりだが、親子で世界チャンピオンとなると、これは長いリングの歴史でもまだ2例しかない。その2例目がスピンクス親子で、父はプロ8戦目でモハメド・アリを攻略して世界ヘビー級王座についたレオン・スピンクス。息子のコーリーは現在ウェルター級で3本のベルトを保持する自称「次世代」のボクサーだ。9月4日の防衛戦でメキシコの老雄ミゲランヘル・ゴンサレス(旧名・東京三太)を大差判定で撃退したばかりである。

 昨年暮れにリカルド・マヨルガとのチャンピオン統一戦を見たことがある。コーリーには父レオンとは好対照のスマートなサウスポーという印象を強く受けた。

 親の七光りというが、コーリーは父だけでなく叔父のマイケルも元ヘビー級チャンピオン。ゴンサレス戦の直後には父と叔父がリングに上がりコーリーを祝福するお決まりのシーンが見られた。しかし、過去のコーリーのコメントをチェックしても、父と叔父に触れたものは不思議なほど少ない。「彼らにはいろいろアドバイスをもらったし、真面目に練習をしろと言われた」。これではあまりにも素っ気なさすぎる。マンツーマンでチャンピオンを目指すという、よくある親子ボクサーの濃密な関係がうかがえないのだ。

 コーリーが誕生したのは1978年2月20日。なんと父が歴史的番狂わせでアリに勝った5日後のことである。有頂天の父は初めて手にした何百万ドルもの大金を湯水のごとく費消し、赤ん坊と一緒に過ごす暇などなかったのではあるまいか。「ヘビー級チャンピオンの息子」は物騒なセントルイスのスラム街で苦労して育ち、何度も肉親や友人の不慮の死を見てきたという。母もすでにこの世の人ではない。しかし、父のようなトラブルも起こさず、元警官のカニンガム(トレーナー&マネジャー)と地道に王座への道を歩んだ。

 敵地イタリアで王座につくまでチャンスが巡ってこなかったのは、プロモーターの力不足と、自身の客受けしない技術的な戦法のゆえだろう。「ボクシングは守りのアートだ」というのがコーリーのポリシーで、ドン・キングでなければ積極的に彼の試合をプロモートする気にはなるまい。脚光を浴びたのはまさにキングと契約して以降なのだ。今後、ビッグネームを倒して父を超えるか?

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