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高橋尚子、復活の条件。“スタイル”から脱皮せよ。 

text by

藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

PROFILE

posted2005/06/09 00:00

 女子マラソンの高橋尚子が、小出義雄・佐倉アスリート倶楽部代表との10年間にわたる師弟関係を解消した。突然の決別を惜しむ声は今でも多いが、一度こぼれた水はもう元には戻らない。今更なぜこうなったかを論じても無意味だろうし、すでに別々の道を歩み始めた二人にとっても本意ではないはずだ。だが、今の段階で一つだけ言えることがある。33歳で独立を選択した高橋の前途は、決して明るくはないということだ。

 高橋が最後にマラソンを走ったのが'03年11月の東京国際だから、すでにそれから1年半以上が経過したことになる。更に現時点で復活の目標にしているのは今秋の海外レースなので、最終的には2年近いブランクを抱える。加えて33歳という年齢もハンデとなる。高橋の手元には小出代表の指導を受けた10年分の練習メニューがあり、「練習面での不安はない」と本人は言うが、そう簡単にはいかないだろう。

 日々の練習は過去の経験でクリアできても、故障など想定外の事態が起きた時の対応はマニュアルにはない。一番怖いのは期待や不安から練習がオーバーペースになった時だ。これまでは小出代表が強引にストップをかけていたが、今後はオーバーペース=故障に直結してしまう恐れが強い。

 こう書いてくると、前途は明るくないどころか絶望的に思えてしまうかもしれないが、希望がないわけではない。高橋の復活に必要なのは、「自分のスタイルに固執しない」ことだ。33歳になったとはいえまだまだ高橋の力はトップレベルにあり、2時間20〜23分程度の走りは可能だろう。真夏に行われる五輪は、タイムより順位の勝負になる。世界記録は必要ない。2時間20分台前半の脚力と、暑さに強い体があれば、3年後の北京でも十分通用するに違いない。高橋尚子の代名詞とも言うべき「先行逃げ切り」を捨てて、「勝負重視」に転換するのは容易なことではない。しかし、生き残る道がそれしかないのなら、あとはやるしかない。

 今でも高橋のファンは多い。私自身もその一人だ。屈辱のアテネ落選から1年以上も耐えたのだから、いまさら焦る必要はない。これから自分が進むべき道をじっくり考え、最良の結論を出して欲しい。心からそう願わずにはいられない。

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