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唯一無二の伝統と格式、それがマスターズだ。 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

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photograph byTaku Miyamoto

posted2007/03/22 00:00

唯一無二の伝統と格式、それがマスターズだ。<Number Web> photograph by Taku Miyamoto

 4月5日から始まるマスターズを僕が初めて取材したのは1974年。もう30年以上も昔のことで、ウッズが生まれるちょうど1年前になる。もうずいぶん長い間、マスターズを取材しているものだと感慨深いものがある。

 テレビに映るオーガスタのコースは、それほどアップダウンがないように見えるが、実際はかなり高低差がある。例えば18番ホールは、ティーグラウンドからグリーン中央まで20mの段差がある。好成績の選手は気持ちよくアップヒルのフェアウェーを闊歩できるけれど、成績の悪い選手には心臓破り。20年近く取材しているカメラマンによると、最終日にもカメラを担いで一気に坂を登ってシャッターを押し続ける体力がなければ、マスターズの撮影はできないという。

 観戦チケットを手にするのが極めて難しいというのもマスターズの特徴だ。シーズンチケットという1週間の通し券があるが、このチケットはいま販売されていない。購入の権利は基本的に世襲制で、要らないと言わない限り継続して申込書が届く。権利を手にしていない人は、ウェイティング・リストに登録するしかないが、1976年にリストの申し込みは締め切っている。仕方なくダフ屋に行っても、130ドル前後のチケットが5000ドル前後もする。是が非でも観戦したいという熱狂的ファンがたくさん集まるからこそ、マスターズで選手たちはいいゲームを見せてくれるのだと思う。

 クラブハウスの2階には、マスターズ歴代勝者しか入れないチャンピオンズルームがあり、その隣から階段を上がると、“カラスの巣”と呼ばれる屋根裏部屋に辿り着く。ここにはマスターズに招待されたアマチュア選手たちが優先的に宿泊できる。ウッズもアマチュア時代に泊まっていて、1泊12ドルだと聞いている。

 かつてミッチ・ボージェスという中年のアマチュア選手が招待され、キャディーを務めた中学生の息子と一緒に“カラスの巣”に泊まったことがある。彼は、「朝、眼が覚めると息子がベッドをきちんと整えていた。家では一度もそんなことをしたことはないのに。それを見ただけでもマスターズに来た甲斐があった」と言っていた。人の心を凛とさせる何かを持つ。それもまた、マスターズならではの魅力なのだろう。

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