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バランサー・中田浩二は「日本のコクー」になれるか。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2007/10/18 00:00

 今年に入ってからバーゼルの中田浩二は、ケガ人や出場停止が出た場合にはセンターバックとして出場することもあるが、ほとんどの試合、左サイドバックとして先発している。役割としては右サイドバックのザンニが攻撃的なため、どちらかというとバランスを取る仕事がメインになる。もちろん機を見てオーバーラップをしかけるが、監督に求められているのは「まず守備」だ。

 それだけに昨年レギュラーとして定着したセンターバックと比べるとボールに絡む回数が少なく、与えられた役割に対して中田が物足りなさそうにしている、と見えるときがある。実際、記者席に座っている筆者も、センターバック時代を観ているときのほうが緊張や興奮を味わえたことは確かで、バランスを取る役割を任されたサイドバックをどう評価していいものか、考え込んでしまった。

 だが、UEFAカップのアウェーのFKサラエボ戦のことだった。そんな中田のプレーを観ていたとき、ふとある選手のことが頭によぎった。元オランダ代表のフィリップ・コクーである。

 コクーはバルセロナ時代にユーティリティー・プレイヤーとしてバランスを取る守備の役割が多かった。もちろんそれが不満だったわけではないだろうが、「子供の頃のようなプレーする楽しさを忘れていた」とコクーは振り返る。

 だが、2004年にバルセロナから母国オランダのPSVに移籍したことで、コクーは生き生きと情熱的にプレーし始める。PSVでは2列目の位置に入り、腹の底に溜め込んできた爆薬に火をつけたかのように前線に飛び出て、ゴールを決めまくった。PSVのCLベスト4進出は、コクーなくしてありえなかった。

 今の中田はバルセロナ時代のコクーに状況がとても似ている。監督もファンも評価してくれるのだけど、役割が地味。個よりチーム。リスクよりバランス──。いつか日本に戻ってこの束縛から解き放たれたとき、恐ろしいほどの変貌ぶりを見せてくれるような気がする。

 バーゼルでの役割に疑問を感じる瞬間があるかもしれないが、高いレベルでもまれ続ければ得るものは大きいはず。本人にすれば特定の選手像を押し付けられるなんて迷惑極まりないだろうが、言わせて欲しい。「日本のコクーになれ!」と。

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