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「セリ市」を賑わす、JRA積極策の功罪。 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

posted2006/09/14 00:00

 日本の馬産が、いや、日本の競馬が、「社台」と「非社台」にはっきりと色分けされている。日高地方の中小の個人牧場、いわゆる「非社台」が日々の経費にも汲々とするなかで、苫小牧市周辺に本拠を置く社台グループは、ワールドトレンドとも言うべき種牡馬を続々と導入して、世界中のブルジョアオーナーの買い気を引き続けている。絵に描いた格差社会は、北海道の太平洋沿岸に鮮やかな縮図として展開されているのだ。

 いわゆる「社台のセレクトセール」(正式には日本競走馬協会主催のそれ)が、超高級ブランド市場のイメージを確立して成功を約束された存在になったのとは対照的に、非社台の市場のイメージは、売れ残った馬たちのバーゲンセール。馬の数が多いだけにセリ市は長期化を余儀なくされ、それがバイヤーには間延びした印象を与える。1122頭が上場された、1歳馬のサマーセール(8月21日〜25日、日高軽種馬農協主催)がまさにそれだった。馬を選定するのは実質的に調教師の仕事。彼らには現役馬の調整という優先されるべき仕事があるだけに、追い切りがある水曜日以降にずれ込むセリの日程にはどうしても無理がある。後半に行くほどバイヤーの数が寂しくなっていったのは当たり前だった。

 このセリで活躍したのはJRAだ。売買が成立した356頭のうち、16%強を占める57頭も買う堂々のトップバイヤー。これを自らの手で育成して来春のブリーズアップセールに上場、付加価値をつけて売却しようという積極政策だ。日高の生産者にしてみれば、確かに強力な援護となっているようにも思う。

 しかしちょっと待ってほしい。このセリにやってくる馬主さんは、セレクトセールで主役を張るブルジョアとは違う層の人たちばかり。自分の予算の範囲でできる限りいい馬を選ぼうとしているわけで、そこにJRAが来て、力ずくで競り合った末にもぎ取って行く行為には大いに違和感を覚えた。「生産者の保護」を言うのならばなおさら、ひと声で落札できるような馬を選定すべきで、一般の馬主を公費でねじ伏せるような買い方では結果的に売却率の向上にも貢献しない。

 JRAが今後も非社台をバイヤーとして支えていくつもりなら、何かの形で自主規制を利かせる心構えが必要なはずだ。

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