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弱小チームを蘇らせた、
“ヒルマンイズム”。 

text by

出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

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photograph byYukihito Taguchi

posted2008/05/01 00:00

弱小チームを蘇らせた、“ヒルマンイズム”。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 ロイヤルズが溌剌としたプレーをみせている。開幕シリーズで地区はもちろん、ワールドシリーズ優勝の最有力候補といわれているタイガースに3連勝。地元に戻ってからはヤンキースに2勝1敗と勝ち越すなど、開幕13試合で8勝5敗の好スタートを切った。

 昨季まで4年連続最下位。そのうち3回が100敗以上という弱小チーム。それでいて、めぼしい補強もなかった。そのため開幕前には5年連続最下位との下馬評がもっぱらだった。

 この“快進撃”には若手の急成長などを始め、いくつかの要因があるが、真っ先に挙げなければならないのはトレイ・ヒルマン監督の指導力だろう。

 「私の監督としての野球哲学というのは、任されたチームの長所を生かした野球をすること。マイナー監督を12年間務めたときも、日本ハムファイターズの監督を引き受け、5年間やらせてもらったときも、そして、今も変わらない」

 メジャーで4番目に若い45歳の監督は、スプリングトレーニングの初日からそういい続けてきた。そして、その言葉通りのことを実践してきた。唯一の長所ともいえるスピードに磨きをかけるために、スプリングトレーニングでは走塁練習に力を注ぎ、一方で平均年齢28.6歳という若いチームにとって必要な、基本的な守備練習に時間を費やした。

 試合でも走塁と守備へのこだわりは徹底的だ。例えば、オープン戦ではこんなこともあった。サヨナラホームランで敗れた試合直後、まだ観客がスタンドに残っていたのにもかかわらず、全員をホームプレート付近に集合させ、強い口調で次のようにいった。

 「ホームランで負けたが、この試合に負けた本当の原因は走塁や守備のミスによるものだ」

 メジャーでは異例ともいえる行動に、選手の中にはファンの前で恥をかかされたと不満を抱く者もいたらしいが、ヒルマンは後日ミーティングを開いて、改めて自分の目指すべき野球を語ったという。

 そんなヒルマンイズムは、早くも浸透してきた。盗塁数はリーグ6位、守備率はリーグのトップなのだ。この数年、メジャーでは下馬評を覆すサプライズチームが出ているが、今年はロイヤルズということになりそうだ。

■関連コラム► メジャーで求められる監督像の変化。 (2007年12月4日)
► ヒルマン野球 ~自由と強制という命題~ (2006年10月20日)

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