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ウィンブルドンが重い腰をあげた理由。 

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吉松忠弘

吉松忠弘Tadahiro Yoshimatsu

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photograph byHiromasa Mano

posted2007/04/05 00:00

ウィンブルドンが重い腰をあげた理由。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

 テニス界の保守本流が、ついに動いた。ウィンブルドンが、これまで頑なに拒み続けてきた男女同額賞金に今年から踏み切った。2月22日に、主催するオール・イングランド・クラブのフィリップス会長が発表した。

 「テニスは同じ大会で男女がプレーする数少ないスポーツ。この同額賞金が、少しでも女子選手の役に立てれば嬉しい」

 今年の賞金総額は4月に発表されるが、昨年の男女の差額は75万950ポンド(約1億7300万円)。今年から、その差を埋める賞金が必要になるが、例年、約50〜60億円の黒字を生み出す世界的イベントだけに、財政に影響は与えない。

 ウィンブルドンは、'68年に世界で初めて賞金付き大会となった。アマチュアの舞台だった世界のテニス大会に先駆けてプロ選手に門戸を開放した。当時、男子の優勝賞金は2000ポンド。女子はわずか750ポンドで、男子の約4割弱だった。昨年は男子優勝65万5000ポンド、女子は62万5000ポンド。女子の割合は、約9割5分まで縮まった。その間に、全米が'73年に男女同額となり、全豪も'01年に追随した。昨年、全仏が優勝賞金だけ男女同額となった。すべてにおいて格差があるのは、4大大会でウィンブルドンだけだった。

 差額をつける理由に「男子は5セット、女子は3セット試合」というのがある。しかし、賞金を生み出す原資は、スポンサー料、入場料、放映権料などである。魅力のあるイベントには多額の金が落ちる。そこに男女やセット数の差はない。どちらが面白いのか、ということだけだ。事あるごとに、女子の魅力について選手はウィンブルドンを説得してきた。ボイコットも辞さないと脅しもかけた。しかし、大会は決して首を縦に振らなかった。

 ここに来て同額を採用した背景には、ツアーの大変革がある。現在、男女のツアーはATP、WTAという男女の選手組合が別々に運営。4大大会を管轄するのは国際テニス連盟(ITF)で、組織は複雑に入り組んでいる。それを1本に束ね、過密日程となっているツアーの大会数を減らし、男女別々の大会を同時開催に統合しようという計画が進んでいる。男女同額賞金は、その流れの中で生まれてきた。100年以上の伝統も、最後は時代の流れに飲み込まれたのだろうか。

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