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EURO2004、名勝負の背後に監督の采配アリ。 

text by

杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byNaoya Sanuki

posted2004/07/29 00:00

EURO2004、名勝負の背後に監督の采配アリ。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 バリバリの気鋭ではない、お役ご免寸前の長老が携わる名誉職。戦術も所詮はクラブからの借り物。そこに新たな発見は少ない。最近、総じて下落の一途を辿っていた代表監督のステイタスは、しかし、ユーロ2004で見直された気がする。

 ポルトガル対イングランド戦。スコラーリ監督が振るった采配は、まさにクラブ的だった。4―2―3―1でスタートした布陣は、1回目のメンバー交替で4―1―4―1に変化し、2回目では4―1―3―2へ、3回目では2―3―3―2へと、それぞれ目まぐるしく変化した。2回目では、フィーゴもバッサリ替えた。選手を駒と割り切り、豊富なアイディアをピッチに刻々と反映させ、チームを覚醒させようとする采配には、鬼気迫る凄みを感じた。名勝負の陰にスコラーリあり。

 大会ベストゲームともいえる、オランダ対チェコ戦もそうだ。メンバー交替には失敗したものの、スタートからオランダ伝統の超攻撃的な3―4―3で臨んだアドフォカート采配。これに対し、より攻撃的な姿勢で交替のカードを切り、撃ち合いの末、逆転に成功したブリュックナーの采配はそれ以上に光っていた。この何年に一度かの名勝負は、優れた監督の力によって誕生した産物と言うべきだろう。

 ユーロ2004は、まるでチャンピオンズリーグの終盤を見るかのような緊張感に満ち溢れていた。代表戦では珍しい出来事だといえる。サッカーそのものも同様に攻撃的だった。でも、結局、優勝したのは守備的なギリシャだったじゃないかという突っ込みには、あの4―3―3を、守備的だという人の見識を疑うと反論したい。スタイルそのものは攻撃的。だから、強豪相手に押し込まれても嫌らしさを存分に発揮できたのだ。その選手の配置は「攻撃的」の代名詞といわれる、両サイド重視であったことは間違いない。相手が均等に圧力をかけてきたとき、5バックになりがちな、3―4―1―2を敷いたわけではない。

 逆にそれは完全に死滅した。僕が観戦した19試合の中で3―4―1―2を敷いたのは、チェコの控えと対戦した際のドイツのみ。フェラー監督の最後は、余計に哀れに見えた。3―4―1―2の価値観が、いまだに幅を利かす日本から訪れると、目が洗われる思いがした。サッカーがまるで違う。ピッチに描かれる図面が違う。これは決定的な事実である。

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