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「手の合う」3親方と、それぞれの愛弟子。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

posted2005/05/12 00:00

 「手が合う」という相撲界の隠語をご存知だろうか?これは大変仲が良いという意味合いで用いられる。かつて人気力士として大活躍した北勝海、寺尾、益荒雄の3人は部屋は違うが、それこそ「手の合う」仲間同士だった。

 3人は年齢が近いこともありライバル意識はむき出し、土俵上では火花が散るほどの激闘を演じた。だが、ひとたび土俵を離れれば、その戦いが嘘のように遊び、ふざけ合った。

 現役を引退し親方となった3人は、それぞれ八角、錣山、阿武松と名乗り、部屋を興して独立している。独立当初は親方自ら、土俵作りに買い出し、新弟子集めと大奮闘だったが、その努力がようやく形となり、期待の若手が頭角を現しつつある。

 第61代横綱・北勝海率いる八角部屋。平均よりも小さい体格であまり素質に恵まれていなかったにもかかわらず、無類の稽古熱心さで補い、兄弟子・千代の富士の胸を借りて頂点まで登りつめた親方。その親方と相撲がダブるのが、新十両の上林。一昨年の学生横綱は幕下で1年、みっちり立ち合いの当たりを磨き、関取の座を掴んだ。ぶちかましに命をかける外連味のない相撲は、実に気風がいい。

 相撲界の鉄人・寺尾率いる錣山部屋。速射砲のような回転の速い突きと俊敏な動きで、いつまでも若々しく相手を翻弄し続けた親方。軽量ながらも筋肉の鎧をまとったかのような体格は、新弟子時代からの猛稽古の賜物だった。師匠張りの猛稽古で幕下上位に昇進したのが、豊真将。正攻法で廻しを取って発揮する相撲は、誠に力強く頼もしい。

 白いウルフ・益荒雄率いる阿武松部屋。立ち合いもろ差しか右差し左巻き替えで一気に寄り、残されれば投げか足技で勝負する素早い取り口。受身がちだった相撲を稽古で攻めの相撲に変え、負けん気の強さで何度も大物を食った親方。その精神を譲り受けたのが、新入幕の片山。押し相撲を貫き、どんな大きな相手にもひるむことなく真っ向勝負する姿には、あたかも相撲道の求道者の趣が漂う。

 横綱・朝青龍の高砂部屋ばかりが脚光を浴びる昨今の大相撲界。「手の合った」親方達が指導者として再び競り合いながら、マンネリ化した今の状況に風穴を開けてもらいたい。

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