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頑固で古くて新しい、カワサキのレース哲学。 

text by

遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

PROFILE

posted2005/05/26 00:00

 5月1日の中国GPで、A・ホフマンの代役として抜擢されたO・ジャックが、カワサキに乗って素晴らしい走りを見せた。7カ月ぶりのGP復帰だったが、並みいる強豪を押しのけ、GP復帰後のカワサキにとって最高位となる2位でのフィニッシュ。これは'04年日本GPの中野真矢の3位を凌ぐ。雨のレースで後方から追い上げたジャックは「奇跡が起きたような気分だ」と語った。トップを快走するV・ロッシの背後に迫る快進撃は、中国GPの話題を独占した。

 20年間のブランクを経て、カワサキは'02年のシーズン終盤にMotoGPクラスに復帰した。ホンダ、ヤマハ、スズキと並び、日本が世界に誇る4大バイクメーカーのひとつ。販売台数ではその中で4番目だが、個性という点ではカワサキに優るメーカーはないようだ。その昔は、市販車もレーシングマシンも、強烈なパワーを武器に、ストレートの速さではどこのメーカーにも負けない荒々しさを持っていた。いまは、そういう時代ではないが、それでもカワサキの個性は際立っている。

 最先端技術の戦いとなるMotoGPクラスは、どのメーカーもレギュレーションという枠組みの中で勝つためのマシン作りを考える。カワサキはさらに、市販車のイメージに直結するバイク作りという枠組みを自らに課す。並列4気筒というエンジンレイアウト。そしてスポンサー色に塗られるワークスマシン群にあって、カワサキのライムグリーンだけは不変である。そのためにスポンサー獲得が困難になっても、それでよしとする意気込み。そういった頑ななまでのこだわりが、多くのカワサキファンを生んだ。

 今年のマシンも、MotoGPマシンとしては目新しいものはない。しかし、カワサキらしい頑固さが満ち溢れるマシンに仕上がった。たくさん持ち球を駆使して常に最多勝利を築くのがホンダだとすれば、速球のみで勝負するのがカワサキだ。その古くて新しいレースへのアプローチは、ジャックの快走によって復帰3年目にして早くも、20年のブランクを埋めようとしているようだ。

 雨の中国GPでジャックが見せた走りは、決してフロックではない。難しいコンディションで見せたカワサキの速さに、これからも大いに注目したい。

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