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悔しさを忘れず
驚異的に強くなった白鵬。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

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photograph byJMPA

posted2009/04/16 07:00

悔しさを忘れず驚異的に強くなった白鵬。<Number Web> photograph by JMPA

 春場所の白鵬は、15日間とおして呆れ返るほどの強さだった。この完璧なリベンジ劇は、初場所優勝決定戦で朝青龍に黒星をつけられた直後の支度部屋から始まった。歯ぎしりが聞こえそうな表情。長い風呂から出てきても天井の一点を凝視し、ようやく数分後、腹の底からしぼり出した声で語った敗因は「差し負け・経験不足・落とし穴」の3点だった。白鵬は敗因を単純、明確にし、ピンポイントで稽古に取り組んだ。

「絶対の型」「後の先」、そして猛稽古

 差し負けの克服には、「絶対の型」を追求した。これまで白鵬は相撲の流れを大切にし、あまり右四つにこだわらなかった。しかし、鋭い踏み込みから瞬時に右四つになり、左上手を引きつけ右下手を大きく返しながら、左足の方から切り返し気味に怒涛の寄りを見せるようになった。通常は上手から下手の方に寄るのだが、懐が広く格段の実力を持つ白鵬ならではの盤石の寄り身である。この形で攻められると、相手は土俵際では棒立ちになり無抵抗にならざるを得ない。今場所活躍した新鋭・豪栄道や栃煌山も為す術なく土俵を割ったのはこのためである。

 経験不足の克服には、最も尊敬している不世出の大横綱、双葉山の相撲を研究した。初場所完勝した本割での朝青龍戦で見せた「後の先」(相手より後に立ちながら、当たったあとは先手を取っている立合い)は、双葉山が得意としていた戦法である。白鵬はその極意を徐々に会得しつつある。日馬富士戦でのどっしりした立合いにもその片鱗が窺えた。

 落とし穴の克服には、連日の猛稽古で対応した。朝青龍のハワイ旅行中も四股やすり足を欠かさず、悔しい思いに意識を集中した。手抜きのない稽古は、回しの下の股関節の外転筋を横にぽっこりと張り出させ、下半身をさらに逞しくする副産物も生んだ。これにより、従来の吸収力に破壊力が加わって、正に鬼に金棒。今場所を見る限り、落とし穴は完全に埋められていた。

全勝優勝に白鵬時代を見た

 30年ぶりに同じ2人の横綱が2場所連続で全勝ターン。今場所も千秋楽決勝が予想されたが、朝青龍が終盤大崩れ。白鵬の優勝は14日目に決まったが、朝青龍との直接対決にも完勝していた。白鵬は10回目の優勝を3度目の全勝で飾った。浪速の桜より一足先に横綱相撲満開。白鵬時代の幕開けといえる春場所だった。

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