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母国に凱旋した名将、モウリーニョの評判。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byMiki Nagai

posted2005/08/04 00:00

母国に凱旋した名将、モウリーニョの評判。<Number Web> photograph by Miki Nagai

 ポルトガルの空港に着くと、レンタカー会社のお兄ちゃんが自慢気に言ってきた。

 「オレは明日のベンフィカ対チェルシーのチケットを持っているんだぜ!」

 ちょうどこの日は、ベンフィカと親善試合をするためにチェルシーがリスボンにやって来た日だった。ポルトガル人のモウリーニョ監督の凱旋試合である。

 「ヤツはポルトガルじゃ、大スターさ。街はモウリーニョの写真で溢れているぞ」

 リスボンの街を歩くと、いたるところにモウリーニョの顔が現れる。今年7月にはポルトガルの大手銀行BPIとCM契約を交わした。広告のさわやかな笑顔は、まるで選挙のポスターのようだ。

 トップ監督に成り上がったモウリーニョを、ポルトガルの人たちはどう見ているのだろう。かつてモウリーニョが指揮していたレイリアの担当記者はちょっと残念そうに言った。

 「彼は変ってしまったよね。レイリアの監督時代は、もっと感情豊かな人間だった。今の彼は、マスクをつけているようだ。でも、サッカー界において、ポルトガルの地位を上げたことは間違いない。だから、みんな彼に敬意を払っているんだ」

 モウリーニョはファンだけでなく、若い指導者にも大きな影響を与えている、とレイリアのゴメス監督が教えてくれた。

 「彼のすごさは、戦術ではなく、それまでの準備にある。サッカーの勝負は試合の前にほとんど決まっていることを示したんだ。ポルトガルの若手にとって、彼は模範であり、そのやり方を学んで、多くの“モウリーニョ2世”が出てくるだろうね」

 もはやモウリーニョは、オランダ人にとってのクライフのような存在に近づきつつある。だが、ちょっと待てよ、と言いたい。モウリーニョのサッカーはおもしろいか? というと、答えはノーだ。手堅い銀行の投資家のように、彼のサッカーにはおもしろみがない。オランダではクライフが攻撃サッカーの思想を生み出し、人の心を魅了し、だからこそ伝説の人となった。それではモウリーニョは何を残すことになるか? 今のところ、試合前の実務的なリアリズムにしか過ぎない。

 今後のポルトガルサッカーの流れを決めるほどの力を持つモウリーニョには、だからこそ言いたい。結果を出して、かつ、魅力的なサッカーをして欲しいと。

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