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スペインGPに見た感動的なリタイア。 アロンソ 

text by

今宮純

今宮純Jun Imamiya

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photograph byHiroshi Kaneko

posted2008/05/15 00:00

 朝には弱いはずのスペイン人ファンが午前中からモンメローの丘を埋め尽くしていた。13万2600人を集めた第4戦スペインGP、今年二つあるうちの最初の“アロンソ母国GP”である。

 このコースには明快な勝利の法則がある。ポールポジションを取ったもの勝ち。'01年から7年連続でそうなっているほど、オーバーテイクが難しいのである(今年もK・ライコネンがやってのけた)。

 母国戦に復活を賭けたアロンソとルノー・チームは予選から狙っていった。スタート時のガソリン量を少なくしてQ3タイムアタック、最初のピットインが他より早めになっても先手を取って戦ったのだ。フェラーリ、マクラーレン、BMWに対しアグレッシブな戦法で挑み、相手のミスを誘い出して何とか表彰台を目指す、アロンソならではの“捨て身の作戦”。これを決断できたのも、ルノーがここにあわせて総力開発したニューパッケージが機能し、フェラーリと肩を並べるまでは厳しくとも、背中が見えるところまでは戦力が整備されてきたからだ。

 結局、燃料を軽くした“特攻作戦”も彼らには通じず、PP争奪戦はライコネンに阻まれたが、ルノーの最前列2位は'06年中国GP以来実に23戦ぶり。アロンソはスタートに備え、フォーメーションラップでマシンを左右に振り回し、タイヤをウォームアップ。やりすぎて最終コーナーでコースを外れかかってもまだ続けた。タイミングはぴったり、発進加速はベストと思われたが、フェラーリ勢のダッシュは圧倒的で3位F・マッサを牽制する間もなくアロンソは彼らの後ろに落ちた。車体重量が軽いのに加速で負けたのは、トラクション性能の差か、エンジン・トルク特性の差か。いずれにせよ、敵との超接近戦をやってみて彼我の差ははっきり分かるものだ。離れていては自分たちに何が足りないのか、どこが負けているのか正確には掴みにくい。

 中盤35周目に2戦目使用だったルノー・エンジンが壊れ、5位にいたアロンソは落ち着いた態度で安全地帯に止めた。女性ファンは涙をうかべ、少年ファンはうなだれ、そして彼らから拍手が沸き起こった。こういう感動的な「リタイアの情景」を見るのは久しぶりだ。アロンソは勝てなかったけれどこの国のF1人気はかえって高まると思う。

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