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クリンスマン監督がドイツに導入した改革とは。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byTomohiko Suzui

posted2005/07/07 00:00

クリンスマン監督がドイツに導入した改革とは。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 ドイツ代表のウォーミングアップはちょっと変だ。足首だけでジャンプ。中腰になって前進。俯せになってハイハイ──異様な光景だが実はどれも、陸上のトップアスリートが、練習に取り入れているものだ。

 現在ドイツ代表には、4人のフィジカルコーチがいるが、そのうち3人はクリンスマン監督がアメリカから連れてきた専門家たちだ。アメリカのNBAやNFLの選手を管理している彼らのやり方は、欧州からするとかなり“異質”なのである。

 クリンスマンが監督になってから、ドイツ代表では改革続きだ。古参のGKトレーナーやコーチがクビにされ、次々に新しい人材が入ってきている。ドイツ代表として初めてメンタルトレーナーが導入されたし、“戦術分析の鬼”として知られるスイス人のジーゲンタラーを招聘した。勝つためには誰の手でも借りようとするのは、まさに合理主義で凝り固まったアメリカ人のよう。彼は、中国系アメリカ人のモデルと結婚し、引退後はずっとアメリカ西海岸にすんでいるのだからそれも当然か。「ヤツは、まるでブッシュ(大統領)のようだ」という批判的な声が聞こえてくるのも仕方ないだろう。

 選手起用にも、批判は多い。

 ドイツ代表は、コンフェデ杯のオーストラリア戦まで、12試合連続で4バックのメンバーが入れ替わった。これではDFどうしの連係を深めることができない。オーストラリア戦では勝ったものの3失点してしまい、ドイツのメディアからは「得点した後にすぐ失点するなんて、ドイツらしくない」と酷評されたのだった。

 しかし、選手だけはクリンスマンの意図を、はっきりとわかっていた。DFフリードリッヒはオーストラリア戦後のミックスゾーンで言った。

 「監督は競争を激しくして、チームの緊張感を保とうとしているんだ。選手としては精神的に辛いけど、予選がないドイツにとっては、ベストの方法だと思う」

 世界で最初にW杯予選を突破した日本にとっても、W杯までの1年間をどう過ごすかは大きな課題だ。選手どころか、スタッフにまでも競争原理を導入し、勝つためには手段を選ばない“クリンスマン流”は、スタッフをファミリーで固めたジーコ・ジャパンにとっておおいに参考になるはずだ。

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