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日本の強化が進まないあまりにも単純な理由。 

text by

吉松忠弘

吉松忠弘Tadahiro Yoshimatsu

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photograph byHiromasa Mano

posted2005/06/09 00:00

日本の強化が進まないあまりにも単純な理由。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

 今年の4大大会第2戦、全仏が真っ盛りである。赤土のコートで戦われる大会は、見た目の華やかさとは違い非常にタフだ。球足が遅く、ポイントを決めるためにすべての技術が要求される。近年は国内で土のコートが激減しており、日本選手にとっては最も苦手なサーフェスとなっている。

 '70年代まで、国内のテニスコートといえば「土」だった。数々のデ杯が行われた今はなき田園コロシアム。全日本の会場でもあったうつぼテニスセンター。すべて土のコートだった。しかし、'80年代になり、高度成長経済とテニスブームの中、民間テニスクラブが乱立した。経営的に見れば、土のコートは、常に手入れをしなくてはならず維持費が大変だ。大半のクラブで、メンテナンスの容易さと効率の高さで、ハードコートが採用された。今の日本選手は、ほとんどがハードコート育ちである。

 ここに来て、そのコート変遷にさらなる異変が起きている。砂入り人工芝コートの台頭だ。砂入り人工芝コートは、ハードコートが持つメンテナンスの容易さに加え、水はけが良く、降雨後も簡単に使用できる。現在、行政が建設するテニスコートは、ほとんど砂入り人工芝コートだ。しかし、このコートには大きな問題がある。世界の男女ツアー公式戦、国別対抗戦のデ杯とフェド杯では、いっさい使用できない。つまり、このコートで育った選手が強くなっても、最も得意なコートが世界の舞台には用意されていない。にもかかわらず、インターハイなど、国内のジュニア大会は、砂入り人工芝で戦うことが増えている。

 文部科学省と日本オリンピック委員会が'07年に完成を目指すナショナルトレーニングセンター(NTC)のコートも、砂入り人工芝になる可能性がある。建設予定の国立スポーツ科学センター隣接地(東京・西が丘)には現在コートがあり、一般開放されている。その流れで、NTCのコートも一部、一般開放が要望されており、砂入り人工芝が望まれているというのだ。日本テニス協会はハードと土のコートを要求しているが、事はうまく運んでいない。確かに経営効率は重要だ。しかし、せめて強化の総本山であるNTCぐらいは、世界基準のコートにしてほしい。

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