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新しきクラブ経営に、夢を見るひとびと。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2008/03/13 00:00

 まるでそのクラブに就職したような気分を味わえる。

 2月19日、イングランド・サッカー界で歴史的な“買収劇”が完了した。インターネットで集まったファン集団「MyFC」が、イングランド5部のエッベスフリート・ユナイテッドのオーナーになったのである。

 このアイデアを出したのは元記者のウィル・ブルックス。「あなたが全てを決定できる」を謳い文句に、投票権を1票35ポンド(約7400円)で販売。選手獲得の決定に留まらず、フォーメーションや先発メンバーも決めることができる。会員は約2万8000人にもなり(つまり約2億円が集まった)、1人1票の原則があるので個人の思い通りに進むわけではないが、公式HPの掲示板でロビー活動をすれば影響力を増すことも可能だ。

 なかでも魅力的なのが、自分がスカウトになれること。早速、筆者も1票を買って公式HPにログインしてみると、「スカウト」のコーナーに世界72カ国から集まった会員がオススメの選手をずらりと書き込んでいた(もちろん「自分を獲得しろ」という人もいる)。日本人を推薦すれば実現する可能性もある。筆者もマメに投票に参加してみようと思う。

 近年サッカー界では、チェルシーのアブラモビッチ、マンチェスターUのグレーザー、マンチェスターCのタクシンなど、金持ちによる名門買収がトレンドになっていた。すでに完成されたクラブのおいしいところをかっさらう行為だけにどこか後味の悪さを感じてしまう。

 それに比べてMyFCのような、下から上を目指すというプロジェクトには、ロマンがあるではないか。ドイツでは大手ソフト会社SAPの創業者ホップが引退後の生きがいとして、'90年に当時7部リーグだったホッフェンハイムのオーナーとなり、17年がかりで2部まで昇格させた。日本では3部リーグに相当するJFLのFC琉球が元日本代表監督のトゥルシエを招聘するという離れ業をやってのけた。スポンサー不毛の地・沖縄でプロクラブは成立しないという固定観念を打ち破り、新たなエネルギーを日本サッカー界にもたらしてくれるだろう。

 お金はないが、アイデア次第で上を目指すことができる。クラブ経営多様化の傾向を歓迎するとともに、応援したい。

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