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新人王候補、青木宣親、つなぎ役に徹する姿勢。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byHideki Sugiyama

posted2005/07/21 00:00

新人王候補、青木宣親、つなぎ役に徹する姿勢。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 野村克也が、今もヤクルトの監督を続けていたら、間違いなく1年目から使い続けたはずの選手が青木宣親。足が速い、ゴロを転がせる技術がある、というのがその理由だ。ともかく足を生かした内野安打が多い。

 ヤクルトの編成も、そのあたりはよくわかっている。宮本慎也に代わる核弾頭役を育てるという理由から、'03年のドラフトで青木を4巡指名。各チーム、相変わらずエースや4番を打てる長距離砲を狙うなかでの選択だった。西武の土井正博ヘッドは「プロに来るのはエースで4番ばかり。意識改革をするのに、何年もの時間を無駄にする」とよく嘆く。青木の場合は、大学時代に徹底してつなぎ役を叩き込まれたから、すんなりとチームに入ってくることができたのである。

 青木は、早大が史上6度目の4連覇に輝いた時のメンバー。中心打者には現在阪神でつなぎ役を果している鳥谷敬がいた。当時の早大・野村徹監督は、鳥谷のバッティングを見ながら、青木にこう言った。

 「お前が鳥谷のようなきれいなバッティングを目指すなら、おれは使わない。足を生かしたきたないヒットで十分だ」

 青木は「監督は自分の特長を生かせと言ってくれたんです」と、この時のアドバイスを今でも肝に銘じている。

 昨年はイースタンで首位打者を獲得。10月6日、阪神戦で放った一軍初安打は、ショート鳥谷の左を抜けるセンター前だった。夏のフレッシュオールスターではMVPに輝く活躍も見せたが、賞金100万円の使い道がふるっていた。全て歯の矯正のために使ったのである。歴代のMVP受賞者を見てみると、'82 年の金村義明(近鉄)は両親を韓国旅行に招待、'87年の大久保博元(西武)は母親に全額を渡し、'90年、石井浩郎(近鉄)は姉の結婚祝いに使った。青木の場合は、全て自分の体の手入れに投資したのだから、今季に賭ける意気込みがうかがえる。

 昨年オフ、早大・野村監督の勇退を労う会が開かれ、同期たちが集まった時、鳥谷がしみじみと「プロの4番のパワーは半端じゃない」と漏らした。それを聞いた青木は、つなぎ役に徹するという意識改革は間違いじゃなかったと思ったのだ。足を生かし、奥歯を噛みしめ振り切る打撃こそ、青木の真骨頂である。

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