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超一流の戦略と技術が天皇賞を制す。 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph byShigeyuki Nakao

posted2004/11/18 00:00

超一流の戦略と技術が天皇賞を制す。<Number Web> photograph by Shigeyuki Nakao

 快速馬ローエングリンが、前半の1000mを60秒1の楽なペースに持ち込んで、注文通りの単騎逃げ。その手綱を取った横山典弘騎手が、「道中の折り合いは完璧。この馬とコンビを組んで、今回が一番いいレースができていたと思う」と自画自賛したほどの、絶妙の運びだった。しかしその直後に目をやると、シェルゲーム、ダンスインザムードの藤澤和雄厩舎の2騎。つかず離れずのポジションで無言のプレッシャーをかけ、どこかで息を入れたい逃げ馬にそのスキを与えない。このシーンを見たときに、一度は回避を表明していた桜花賞馬を土壇場で再登板させたことの思慮深さが汲み取れた。同厩舎の大将格ゼンノロブロイ(牡4歳)がこの大一番で取りこぼすことがないように、まずは展開面で予想できる悪材料を自分の力で可能な限り除去してしまおうと考えたのだ。

 思い出すのは昨年の菊花賞。ゼンノロブロイとペリエ騎手のコンビは、超スローペースの中で絶好位を奪いながら、勝負所で渋滞にはまって抜け出せなかった。ペリエが「ボクの騎手生活でもワーストと言える騎乗」とガックリ肩を落とし、藤澤師も逆ギレ気味に「(逃げ馬をつかまえに行かない)2番手の馬の騎手が悪い」と、この人には似合わない、怒りの表情を隠せなかったのだ。

 ペリエ騎手とゼンノロブロイはそれ以来のコンビ復活。それだけにジョッキーとしても名誉挽回を期していたろうし、藤澤師としても、この天皇賞を勝てば同一G?3連覇という史上初めての快挙という大きな勲章がついてくる。いま思えば、ダンスインザムードにルメールというもう一人のフランス人騎手を配してきたのも、平成の名伯楽が思い描いた展開を実現するために、その仕事を忠実に成し遂げてくれると考えたからだったろう。

 直線半ば、逃げていたローエングリンを同じ勝負服のダンスインザムードが強引にかわして行く。その外からペリエのうなる右ムチに鼓舞されてゼンノロブロイが一歩ずつ差を詰めて、ついに悲願の戴冠を果たした。

 オリビエ・ペリエ騎手は47年ぶりの秋の天皇賞連覇。藤澤和雄調教師は天皇賞戦後初の1、2着独占というおまけまでつけて、記録ずくめで秋の天皇賞4勝目を飾った。超一流のホースマンの戦略は、レース後の検証でも味わい深いものがある。

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