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単一チームでキャリアを全う出来る選手の魅力。 

text by

津川晋一

津川晋一Shinichi Tsugawa

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photograph byYukihito Taguchi

posted2007/08/23 00:00

単一チームでキャリアを全う出来る選手の魅力。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 「茶髪の増えた中で黒髪がキレイに見えるように、彼らはすごく格好良く見えています」。7月13日、イチロー(マリナーズ)が5年契約延長を発表。その席上、単一球団でキャリアを全うした選手のことを問われ、独特の比喩でそう答えた。

 その後、相次いでそんな“黒髪”たちに触れる機会があった。24日、3000本安打を達成したクレイグ・ビジオ(アストロズ)が現役引退を発表。その日の試合で決勝満塁本塁打という離れ業をやってのけた。そして29日には、2632試合の連続試合出場記録を持つカル・リプケン(元オリオールズ)と首位打者8度のトニー・グウィン(元パドレス)の殿堂入り式典が行われた。

 気になって“黒髪”検査をしてみる。現役で10年以上単一球団だけに在籍している選手は15人。15年以上に絞り込むと、調べを手伝ってくれたMLB関係者は首を横に振って溜め息……。ビジオ(20年)とジョン・スモルツ(ブレーブス・19年)の2人しかいないことが分かった。

 彼らの次に“黒髪”の長いギャレット・アンダーソン(エンゼルス・14年)は言う。「道程は本当に困難だ。球団は、しばしば運営方針や組織構成を再構築することがある。そのプランにフィットしない選手は去ることになるし、自らFAで出て行くこともある。高額契約は最高のプレーをしていれば手に入れられるかもしれないが、単一球団に居続けるには、球団や地元ファンにとって唯一無二の存在でなければならないんだ」

 ふと、ミニッツ・メイド・パークでのことを思い出した。「ビ・ジ・オ! ビ・ジ・オ!」と熱心に応援していた大観衆。母音が同じこともあり、それは「イ・チ・ロー! イ・チ・ロー!」というシアトルのファンが支持する歓声に重なって聴こえた。

 1970年代後半にFA制度が導入されて以降は代理人が幅を利かせ、高額契約を勝ち得て移籍を繰り返すことが一つの成功のカタチとして市民権を得た。大物選手を掻き集め「もはやチャンピオンリングは金で買える時代になってしまった」と揶揄されたオーナーもいる。

 野球がビジネスの側面を持つ以上、どちらが良い悪いという問題ではない。

 ただ、改めて思った。

 “黒髪”っていいもんだな、と。

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