SCORE CARDBACK NUMBER

大日本プロレスを支える日本一の働き者・李日韓。 

text by

門馬忠雄

門馬忠雄Tadao Monma

PROFILE

posted2007/08/09 00:00

 パカーンという乾いた破裂音。白煙と同時に弾け飛び散る夥しいガラスの破片。その破片のムシロにボディ・スラムで思い切り叩きつけられる選手たち。想像していた以上の迫力と惨状に思わず身がすくむ。

 しかし、一度踏み込んだら癖になってしまうのがデスマッチの世界。「オ・ン・ナは血を見ると血が騒ぐのよ」とかみさんに尻を叩かれ、横浜文化体育館がホーム・リングの大日本プロレスに通うようになった。

 血まみれの男たちを手際よく裁くレフェリーは李日韓。女性だ。しかも大日本のエース・伊東竜二の奥さんなのだ。小柄で色白、ポッチャリ型の李さんは軽いフットワークで選手の体を気遣い、蛍光灯の破片を取り除いていく。リング上での目配り、気配りが素晴らしく、筆者の視線はいつも李レフェリーの動きに注がれてしまう。

 7・8横浜文体の試合は物凄かった。王者佐々木貴(アパッチ軍)vs.挑戦者伊東のヘビー級タイトル戦、蛍光灯300本デスマッチだ。佐々木がラリアットと蛍光灯束の猛爆で22分24秒、伊東を大の字にして王座を防衛した。昨年9月に両腕の骨折と脱臼でベルトを返上した伊東。10カ月ぶりの王座奪回はならなかった。

 「自分のダンナの試合を平静で裁けるの? どんな気持ち?」

 その試合も裁いた伊東夫人に、試合後に思い切って聞いてみた。

 「仕事ですから、いつも公平さを心がけています。リングに上がったら、みんなと同じ一選手です。それに彼はウチでプロレスの話を一切しませんから」

 一日6〜7試合を裁き、試合後は後片付けもこなす。その上ファンサービスのためにグッズ売り場の店頭にも立つ李さん。筆者に言わせれば日本一の働き者だ。

 そんな忙しく立ち働く姿を見て、国際プロレスの元レフェリー、若松市政氏を思い出した。選手兼リング係で輸送トラックの運転手もやり、故吉原功社長をして「ウチの最高殊勲選手ですよ」と言わしめた人物。我々が「イチッつあん」と呼ぶ若松氏は、現在芦別市の市議会議員を務めている。

 北の大地から好物のチーズが届いた。李さんと将軍KY・ワカマツの笑顔を重ね合わせて、ロックグラスを傾けた。

関連キーワード
大日本プロレス

ページトップ