SCORE CARDBACK NUMBER

王者の引退で露呈したヘビー級の人材不足。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph bySumio Yamada

posted2005/12/08 00:00

王者の引退で露呈したヘビー級の人材不足。<Number Web> photograph by Sumio Yamada

 05年のベスト・カードと期待されたWBC世界ヘビー級戦が、試合1週間前に突如延期され、さらに右ヒザを負傷した王者ビタリ・クリチコ(34)が引退表明、意外な展開には驚くばかりである。レノックス・ルイス引退後しばらくは、弟ウラジミールとともに、クリチコ兄弟の時代が続くと見られたというのに、まさかこんな形で終わろうとは……。

 ケガに弱かった身長2m超の巨人は試合を再三延期し、相手のハシム・ラクマンは「きっと今度もどこかが痛いと言い出すさ」とチキン呼ばわりしていた。だがクリチコはリングに上がるだけで自己最高報酬780万ドル(約9億円)を受け取る約束だったのだから、これをフイにしてまで仮病を使う理由は考えられない。「ファンを欺いてリングには上がれない。これは私のプライドの問題だった」とクリチコの潔いコメントが伝えられている。

 ヘビー級の中でも正統とされるWBC王座は、レノックス・ルイスとクリチコと2代続けてチャンピオンがベルトを返上して引退する異例の事態。おかげでヘビー級は混迷を深めている。WBCは暫定王者だったラクマンを正王者に昇格させる一方、クリチコに「名誉王者」の称号を与えた。心変わりして現役復帰するならすぐ挑戦権を与えるというのだ。これも人材不足ならではの苦肉の策か。実際にクリチコの復帰説は消えていない。

 主要4団体の王者すべてを契約下に置くドン・キング・プロモーターは、常套策の「チャンピオン統一トーナメント」をブチ上げたが、ラクマン以外は小粒で不人気王者ばかり。ランキングを見渡しても、新顔はいるが次代を担いそうな新鮮なスターは見当たらない。弟クリチコも兄以上の活躍は期待できまい。

 かわりに意欲的なのはロートルで、アリを抜く4度ヘビー級王座獲得のイベンダー・ホリフィールド(43)、マイナー団体を含めれば5階級制覇のジェームズ・トニー(37)など。ホリフィールドはニューヨーク・コミッションからサスペンドされていたが、なぜかドイツで試合予定がある。「昔の名前で出ています」が通用するのは、人材不足ゆえの、業界・テレビ局の要請でもあるのだろう。

 いずれにせよ、PPVの申し込みが殺到するようなビッグマッチは当分ないか。

ページトップ