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チェンバレン先発転向。帝国崩壊の予兆か? 

text by

出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

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photograph byYukihito Taguchi

posted2008/06/26 00:00

チェンバレン先発転向。帝国崩壊の予兆か?<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 勝率5割を挟んで行ったり、来たり。序盤2カ月のヤンキースの戦いぶりは、同じように故障者を出しながらも勝利を重ねる宿敵レッドソックスとは対照的に、ストレスのたまるものだった。

 そのテコ入れとしてヤンキースが決断したのは、セットアップマンとして完璧に近い仕事をしていたジャバ・チェンバレンの先発転向である。リードしている試合で8回をチェンバレン、9回をマリアノ・リベラで締めるのが、今年のヤンキースにおける唯一の勝利の方程式。

 それを敢えて崩し、シーズン中に異例の転向をさせることにしたのは、先発入りを計算していた2人の若手投手が故障してしまった事情もあるが、何よりも経営者サイドの意向が強く働いた結果だ。

 「100マイル(約161キロ)も投げられる投手をリリーフに置くのはもったいない」といって“強権発動”したのは、今年から実質的な経営を父親ジョージから引き継いだ長男のハンク・スタインブレナー。実は、今春のスプリングトレーニング中にもこの大物投手の起用法を巡り、経営者サイドと現場の間で何度も話し合いが行われた。そして、その結論が「今年はリリーフでいく」ことだった。

 つまり、それをツルのひと声で覆したということになる。

 お陰で現場は大混乱。チェンバレンの肩、ヒジなどの消耗度に配慮して先発転向の1試合目は65球、2試合目は80球と球数制限をしてマウンドに送り出した。

 「リリーフも好きだけど、僕はもともと先発。どちらでもいいんだ」と、当初は無邪気に語っていた22歳の若者も、実際に先発のマウンドに立つと、重圧を感じたのか力みが目立った。2試合とも制限された球数まで投げられずに降板。本人の勝敗は付かなかったが、その2試合で1勝1敗に終わったヤンキースは、この“大いなる実験”によって余分なリリーフ投手を使わなければならなかった。また、先発転向の準備に入った段階から、チェンバレンがブルペンにいれば勝てそうな試合が3試合もあった。

 「この先、10年間はエースとして働ける」(ハンク)という逸材が、思惑通りに先発の柱に育っていくのか。チーム内には、この転向に疑問を投げかける声もあるだけに、一歩間違えば、帝国崩壊の大ピンチに立たされるだろう。今後に注目だ。

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