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ウェバーが示した、不完全ゆえの魅力。 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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posted2008/04/17 00:00

 シーズン終了を待たずに、クリス・ウェバーが引退した。痛めた膝の回復がおもわしくなく、これ以上は無理だと判断したのだという。

 NCAAトーナメントの最中に引退を発表したのは単なる偶然かもしれないが、それにしても皮肉なタイミングだった。というのも1993年4月5日、NCAAトーナメント決勝戦、当時ミシガン大の選手だったウェバーは、すでに使い切っていたタイムアウトをコールするという痛恨のミスを犯し、敗戦を決定づけてしまったのだ。

 15年の年月がたってもウェバーにこのエピソードがついてまわるのは、それが彼のキャリアを象徴しているからかもしれない。全米が注目する一戦で、優勝を目の前にしてのポカミス。その後NBAに入ってからも、溢れる才能に大きな期待がかけられる一方で、その分、物足りなさがついてまわった。

 208cmの長身ながらガードのようなパス能力とセンス、ソフトなシュート・タッチを備え、時代の先端を行くオールラウンド選手だった。ドラフト1位指名され、新人王に選ばれ、オールスターにも5回選ばれた。キャリア平均20.7点、9.8リバウンド、4・2アシストは歴代の名選手と肩を並べる数字だ。

 しかし、それだけの実績を残しながらも、それだけに終わってしまったという感も否めない。コーチと揉め、怪我に泣き、才能を完全に生かしきれないままだった。のべ6チームを渡り歩いたが、プレイオフはカンファレンス・ファイナル止まり。結局、大学に続いてNBAでも優勝には縁がなかった。特に5年前に膝の手術をしてからは、プレーの輝きも色あせてしまっていた。

 それでも、妙に気になる存在だったのはなぜなのだろうか。

 引退会見で、ウェバーは「もっと上手くできていたらと思うことはたくさんある。それでも限界までやれたし、自分のキャリアには満足している」と言うと、トレードマークでもある、とびっきりの笑顔を見せた。

 不完全であることは罪ではない。むしろ、人間であれば不完全で当たり前。彼は、完璧を求められるプロスポーツの世界において忘れがちなそのことを思い出させてくれる存在だったのかもしれない。

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