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サイ・ヤング賞候補に躍り出た“小さな巨人”。 

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津川晋一

津川晋一Shinichi Tsugawa

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photograph byYukihito Taguchi

posted2008/11/06 00:00

サイ・ヤング賞候補に躍り出た“小さな巨人”。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 サイ・ヤング賞の発表が11月中旬に迫っている。ア・リーグはクリフ・リー(インディアンズ)が当確との見方が大半だが、ナ・リーグでは2年ぶり2度目を狙うブランドン・ウェブ(Dバックス)の前に、新進気鋭の“小さな巨人”が大きく立ちはだかりそうだ。

 一昨年ドラフト1巡目で指名されて、瞬く間にスターダムを駆け上がったジャイアンツのティム・リンスカム。180cmに満たない身長で体重も77kg と、メジャーリーガーには見えない痩身だ。シャギーヘアで童顔の24歳は、敵地でクラブハウスに入る際に警備員に制止されたエピソードを持つ。ところがマウンドに上がれば、100マイル近い速球で次々と打者をねじ伏せる。そのギャップで地元では知らない人はいないほど人気者になった。

 ダイナミックなフォームが快速球の秘密だ。一般的な投手のストライドが身長の82%前後なのに対して、リンスカムのストライドは130%近くに及ぶ。「自然とそうなった」という風変わりな投球フォームを、プロ入り後もいじらないように元マイナー投手の父親がコーチに要請。それが功を奏した。

 「僕と同じく父も大柄じゃなかったから、できるだけ自分の体を効率よく使うことを分かっていたのさ」

 そのリンスカム、22勝とダントツの勝ち星をあげたライバルのウェブに4勝足りないが「僅差になる。もし自分に投票権があるのならリンスカムを選ぶよ」とウェブの身内、Dバックス関係者すら唸らせるほど内容の良さは群を抜く。メジャートップの265奪三振だけでなく勝利数と防御率でもリーグ2位で、この投手3冠全てにトップ3入りしているのは彼ただ一人。そして何より、勝利数以上に先発能力の指標とされるクオリティ・スタート(6回以上を投げ自責点3以内に抑えること)の回数でもウェブを上回るリーグ2位の成績だ。

 地元サンフランシスコ・クロニクルの番記者も「投票権を持つ記者と話したら、すでにリンスカムに入れると決めた人は何人もいたよ」と期待を膨らませていた。10月20日には選手会がリンスカムをリーグ最優秀投手に選出。選手間投票によるお墨付きも得た今、風貌よろしくメジャーのシンデレラボーイとなれるか。

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