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JC制覇を決定づけたレース前の出来事。 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byShigeyuki Nakao

posted2004/12/16 00:00

JC制覇を決定づけたレース前の出来事。<Number Web> photograph by Shigeyuki Nakao

 JRAの創立50周年を記念して行われた同日GIダブル開催。慣れないためか、先に行われたジャパンカップダートの白熱の戦いの余韻が薄まってしまった感はあったものの、ファンの反応はおしなべて上々。スタンド改築工事が未完成で手狭な東京競馬場に、約12万人の観衆が押し寄せたのだから大成功だった。

 1着賞金2億5000万円をかけて争われた第24回ジャパンカップ(11月28日、芝2400m)は、「今年は小粒」とも言われた日本勢の総大将、ゼンノロブロイ(牡4歳、美浦・藤澤和雄厩舎、父サンデーサイレンス)が、3馬身という決定的な差をつけて完勝した。2カ月のロングラン開催の最終日の荒れた芝に刻んだ2分24秒2の走破時計といい、上がりの卓越した速さ(34秒3)といい、歴代のチャンピオンと比較しても遜色ない堂々たる内容。意外なことにこれがJC初優勝となった藤澤調教師も、「どこをつついたってケチのつけようがないだろう。何回やったってロブロイが勝つよ!」と、珍しくテンションを抑えずにインタビューに答えていた。

 「普段はナマケモノかと思うぐらいに大人しい馬。血気盛んな2歳馬と併せ馬をしてもムキにならないから平気で負けるんだ。去年あたりはシンボリクリスエスを相手に、逆にムキになって立ち向かって行ったりしたものだけど、いまは力の入れどころをわきまえた賢い馬に成長してくれた」と藤澤師。長い雌伏期間を経て本格化し、ついには天皇賞、ジャパンカップと連続で完勝を演じるまでになった愛馬を満足そうに見つめるのだ。

 レース直前の装鞍所で、勝敗に大きな影響を与えたかもしれない出来事があったという。アイルランドの天才調教師、エイダン・オブライエンが初めて日本に送り込んできたパワーズコート(牡4歳、父サドラーズウェルズ)が、他の15頭を威圧するように後脚だけで立ち上がって咆哮を1回、2回。「まずい。このままだと、このアイルランドの生意気な馬に仕切られてしまう」と藤澤師も怖れを感じたほどだ。そのときに文字通り立ち上がったのがゼンノロブロイ。寡黙なはずの日本代表が、サラブレッドが発したとは思えない低いうなり声でパワーズコートを一喝。「思えば、あのときに勝負は決していたのかも」と、名伯楽はもう一度会心の笑みを浮かべた。

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