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8726通りの夢を乗せ、 '04全米オープン開幕。 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

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posted2004/06/17 00:00

 マスターズと違って全米オープンや全英オープンは、誰でも参加できるオープン方式のメジャートーナメントである。もちろん本戦に出場するには、各地で開催される予選会を突破し、さらにセクショナル予選を勝ち上がらなければならない。

 鈴木規夫が全英オープンで10位タイとなって日本中を驚かせた'76年。鈴木が出場した当時の予選会はのどかなものだった。

 アメリカからやって来た学生ゴルファーは、自分でキャディバッグを担いでスタートし、見るに見かねたギャラリーのひとりが、自らキャディを買って出た。自分はプロゴルファーだと触れ回って出場したが、100以上のスコアを叩き、あっさり嘘がバレてしまったタクシードライバーがいた。スコットランドから総出で予選会にやってきた家族もいた。彼らにとって、予選会の出場は夏休みの旅のメインイベントだったのだ。

 今年の全米オープン(17〜20日)の予選会には、史上最多の8726名のゴルファーが挑戦した。もちろん参加者の大半はアマチュアゴルファーたちである。まさか100以上叩くゴルファーは、今はいないと思うけれど、文字通り門戸が開かれたナショナル・オープンなのである。

 昨年、日本人の両親を持つヒロシ・ハリー・マツオ(松尾浩)という当時34歳の日系米国人が、14回目の挑戦で初めて予選会を突破し、本戦で活躍したことが話題になった。187cmのがっしりした体格と後ろに結んだ長髪が印象的な彼は、ミニツアーではちょっとしたプロゴルファーだが、レギュラーツアーの資格はない。それでも「全米オープンの本戦で上位に食い込みたい」という夢を忘れず、毎年、予選会にチャレンジし続けたのだ。本戦には、フロリダ州パームビーチで日本料理店「正相模」を経営する父・正義さんら家族も応援にかけつけた。プロゴルファーだけでは生計を立てられない彼は、テニスのウィリアムズ姉妹ら著名スポーツ選手も来店するという同店のマネージャーも兼務している。

 戦いの頂点に立てるのはたった一人でしかない。だが、予選会に出場した8726人のゴルファーには、それぞれの夢であり、思いがある。勝ち負けでは計ることのできないゴルファーたちの物語の中にこそ、ナショナル・オープン最大の魅力があるのかも知れない。

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