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アンビリーバブル王者城戸が急成長した理由。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph bySusumu Nagao

posted2008/03/13 00:00

アンビリーバブル王者城戸が急成長した理由。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

 本命アンディ・オロゴンも対抗TATSUJIも総崩れ。『K―1 WORLD MAX2008〜日本代表決定トーナメント〜』(2月2日・東京)は大波乱の中、幕を閉じた。激闘を制したのは、出場メンバーの中で一番知名度の低かった城戸康裕(谷山)だった。

 「まるで夢を見ているみたい」

 真新しいチャンピオンベルトとともに控室に戻ろうとする道すがら、城戸はそう呟いた。その傍らにいた谷山ジムの谷山歳於会長も「まさか城戸が優勝するなんてね。俺でも予想できなかったよ」と相好を崩した。城戸陣営にとっても今回の優勝はアンビリーバブルだったのだ。

 K―1の歴史を遡ってみても、全くの無印選手が優勝するのは記念すべき第1回のK―1ワールドGPを制したブランコ・シカティック以来だろう。ニューヒーローの誕生こそ、ワンデートーナメント最大の醍醐味だ。

 城戸はMA日本キックボクシング連盟認定の日本ミドル級王者。その一方で中高の保健体育の教員免許を持つ文武両道ファイターだ。決してルックスも悪くないし、過去K―1のオープニングファイトで3戦した経験もある。何よりも181センチという長身は、K―1中量級戦線で大きな武器になる。にもかかわらず今まで埋もれていたのは、人を押し退けてまで這い上がってやろうというハングリー精神に欠けていたからだろう。案の定、昨年まではここ一番という試合に限って落としていた。驕りや油断が原因だ。

 「体格的に城戸はK―1やキックボクシングに向いているし、身体能力も高い。問題はココだけだよ」

 城戸の話題になった時、ある著名な指導者は自分の心臓を指さした。どんなに才能があっても、心の部分が強くないとトップファイターにはなれない。案の定、この日も城戸は1回戦で対戦相手の蹴りをもらった時に心が折れかけたという。それでも次の瞬間、気を取り直した。

 「ここで負けたら、俺には何もないじゃないか」。迷いがなくなった男は惚れ惚れとするような力強さを見せつけながら頂きを極めた。現役のムエタイ王者からマンツーマンで指導を受けているだけに、ヒザ蹴りやミドルキックの破壊力と精度は折り紙付き。礼儀正しき日本王者は世界で通用する可能性を秘めている。

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