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荒鷲二世、デビューはほろ苦いKO負け。 

text by

門馬忠雄

門馬忠雄Tadao Monma

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photograph bySusumu Nagao

posted2007/05/17 00:00

荒鷲二世、デビューはほろ苦いKO負け。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

 現実は厳しかった。仕事と格闘技の両立に挑んだ“荒鷲二世”坂口征夫(33・坂口道場)のプロデビュー戦は、111秒の惨めなKO負けだった。

 パンクラスの4・27後楽園ホール大会。第4試合に登場の征夫は、ウェルター級(75kg未満)5分2Rで空手出身のチェ・ヒュンソクと対戦した。ヒュンソクの長いリーチに阻まれ、得意のヒザ蹴りが決まらず、右フックから左ストレートの連打を食らって、ひざから崩れ落ちた。

 「ヒザもパンチも当たらなかった。経験不足の一言です」。敗れた征夫は潔かったが、それでも負けん気が頭をもたげ、尾崎允実社長に韓国でヒュンソクとの再戦を直訴していた。

 征夫は坂口征二新日本プロレス相談役の長男。筆者は小さい頃から見てきたが、彼の生活の中には常にプロレスがあった。世田谷・野毛の道場で遊び、ひとりで会場へも出かけた。将来は親父と同じ道を……。しかし、体が小さかった。当時の新日本の選手入門規定は180cm。社長だった親父が入門テストのOKを出せるはずもない。そこに永田裕志、中西学らの世代から「お前なんか、その体じゃ無理だよ」とダメ押しを食らったのだ。

 この現実に明大中野高校で柔道をやっていた征夫は荒れた。喧嘩喧嘩の毎日で両親を困らせ、大学への進学が決まっていながら、専門学校に通って就職した。親父を尊敬しながら、高いハードルを越えられなかった重圧と挫折。その苦闘が背中に踊るタトゥーに表現されているのかもしれない。

 普段は建築会社の役員を務め、現場監督で深夜まで続く作業も多いという。すでに1男1女の父親であり、利英子夫人(32)は7月に第三子を出産の予定とか。征夫は「オレは親父や憲二とは違う。仕事と家族があるからね」と言う。

 この日父親は「オレが行けば迷惑だろうから……」と会場に来なかったが、弟の憲二(31)はスタンド席最前列で兄の活躍を見守っていた。その憲二は勝負が決まった瞬間席を立ったというが、勝てばリング上での2ショットが見られただろうに残念だった。

 かなえられなかった夢を総合格闘技のリングで咲かそうと、スタートラインに立ったばかりの“荒鷲二世”。ケガをしないことを祈るばかりだ。

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