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川本登場で熱を帯びるヤクルトの正捕手争い。 

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永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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posted2007/07/26 00:00

 後半戦出足好調で、セ・リーグプレーオフ争いの台風の目となりそうなヤクルト。大きな要因は、若い捕手の台頭にある。

 まずは6年目の福川将和。リーグ戦再開後、6試合で5本塁打を放ち、彼が打てば負けないというジンクスを生み出した。その福川が自打球を左足すねに当てて欠場した時、古田敦也監督が次の女房役に指名したのは、11年目の小野公誠でも、8年目の米野智人でもなく、3年目の川本良平だった。ずっと二軍暮らしの選手だったが、7月7日の巨人戦で初先発すると、初安打が3ランという離れ技をやってのける。リード面でも完封リレーに貢献し、一躍ヒーローとなったのである。

 川本の売りは、捕ってから投げるまで、1秒8という素早さだ。古田がヤクルトに入団した時、当時の野村克也監督はいかに素早く二塁に送球できるかがレギュラー獲りの条件と言って、ユマキャンプで自ら手本を示していたものだ。その後、古田の良さは肩の強さだけではなくスローイングの確かさにあると言われはじめる。今年の浦添キャンプで、古田が川本にスローイングを教えている姿を見て、17年前のユマを思い出した。

 監督という人種は、前任者の息のかかった選手よりも、自分で育てた選手を使いたくなるものらしい。古田も例にもれず、川本にかけた。若さを生かした恐いもの知らずの強気のリードは、石井一久などベテランピッチャーからの評価も高い。

 川本の活躍を聞いて、「いやな思い出がある」と言ったのはソフトバンクの和田毅である。5年前の早稲田大時代、大学選手権決勝で亜細亜大にサヨナラ負けを喫したのだが、その時サヨナラ打を打ったのが川本だった。

 早い時期から期待されていたが、2年前の左手首の手術もあって足踏みした。遅れてきた男が、ようやくヤクルトの正捕手争いに名乗りを上げたわけだ。「ひとりの捕手を育てれば、10年は安泰」と言われるプロ野球界。ヤクルトを10年支える存在となれるかどうか。

 初ホーマーのご褒美である監督賞10万円を、今年元旦に入籍した妻にすべて渡したという微笑ましいエピソードも、川本に期待したくなる要因である。

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