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ミゲール・コットが立ち向かう二人の強敵。 

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前田衷

前田衷Makoto Maeda

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posted2008/07/24 00:00

 “パウンド・フォー・パウンドNo.1”。つまりあらゆる階級を通じて現役最強と目されたフロイド・メイウェザーの引退は、世界中のファンを大いに落胆させた。同時に、プロモーターたちの失望も計り知れない。

 5階級で世界チャンピオンとなり、放言癖も含め同業の若いボクサーの憧れの的だった天才が、なぜ一試合数十億の報酬を稼ぐ機会を捨てて引退に踏み切ったのかは、余人には窺い知れない。一部では気まぐれな“プリティボーイ”が翻意してカムバックするという期待もあるが、当分それも望めまい。強豪ひしめくウェルター級の最高カードとなるはずだったミゲール・コットとの不敗同士の対決が幻のまま終わるのは残念である。仮に2、3年後メイウェザーが復帰してこのカードが実現したとしても、互いに絶頂期の今だからこそ味わえるボクシングの醍醐味は半減されるに違いない。

 ただ、コットにはライバルの引退を惜しんでいる余裕などないだろう。目前にもう一人強敵が迫っているからだ。7月26日、メキシコの倒し屋アントニオ・マルガリートとラスベガスで対戦する。コットがメイウェザーの地位をとって代われるかどうかを占う大事な一戦である。

 “ティファナのトルネード”と異名をとるマルガリートは、「メイウェザーも対戦を避けた」というのが売り文句だが、これはプロモーターのボブ・アラムが言い出しっぺだから話半分に聞くとしても、おそろしく攻撃的な戦法と、36勝中26KOを生んだ破壊的な拳は、誰にとっても脅威である。今回も「終始コットにプレスをかけ続ける」と公言しているが、両者の戦法からも激闘は必至である。

 プエルトリカンとメキシカンは、名ボクサーを数多く輩出する点でもライバル関係にある。両者は、これまでにカルロス・サラテ―ウィルフレド・ゴメス戦、サルバドール・サンチェス―ゴメス戦、デラホーヤ―トリニダード戦など、歴史的名勝負を何度も演じてきた。今回もそのひとつに数えられるかもしれない。予想はややコット有利だが、試合地がメキシコ系住民の多いラスベガスという点に、番狂わせの予感もする。コットはメイウェザーが成功したように、こうした重要試合を勝ち続けることによって、もっとカリスマ性を高めたいところだ。

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