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日本ジム所属選手による王座統一戦への期待感。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2004/07/29 00:00

 1週間足らずの間に横浜のジムから立て続けに2人の世界チャンピオンが誕生した。日本のボクシングもやるときはやるもんだ。

 徳山昌守をワンラウンドで沈めた川嶋勝重ほどの衝撃はなかったものの、7月3日後楽園ホールのWBAミニマム級戦で勝った新井田豊の変身ぶりにも光るものがあった。

 新井田といえば、初挑戦で世界チャンピオンとなった後、一度も防衛戦を行わないままベルトを返上して“引退”するという前代未聞の怪挙(?)をやってのけた男である。当時は身勝手だと非難され“新人類”扱いもされた。それでもジムの後輩の指導に当たっているうちに再起を決意し、3年ぶりに自ら手放したタイトルを奪還したのだから、これはなかなか真似のできることではない。

 この一戦、試合前日の計量で王者ノエル・アランブレットが規定体重に落とせず、タイトルを剥奪された。これでやや試合の興味を削がれた感はあるが、勝っても王座を取り戻せないという戦意も鈍りがちな条件下で、アランブレットは意外なほどしぶとく強かった。4年前にも同様な失敗で無冠になったことがあり、剥奪なれ(?)もあったのか。

 新井田は日本選手には珍しく黒人王者に共通する天才的リズムを持つが、老獪なアランブレット相手にはなかなか攻撃が繋がらず、崩し切るまではいかなかった。それでも終盤疲れの見えたベネズエラ人を馬力で押し切り、接戦をモノにした。ジャッジの採点は大差がついたが、これは計量失敗のアランブレットに対する暗黙のペナルティでもあったのか。

 それはともかく、負けにくい相手を攻略できたのも、新井田の最近の成長なしには不可能だったろう。筋トレを取り入れた成果は上半身の発達という外観で明らか。だが、以前との一番の違いは自ら「ボクシングを楽しんでいる」と言うように、精神的な余裕が出てきたことだ。「(関会長らスタッフに)感謝の気持ちで一杯です。体が続く限り恩返ししたい」と周囲への配慮も自然と口をついて出た。

 これで、同じミニマム級のWBC王者イーグル京和との「チャンピオン統一戦」の期待も膨らむが、これは興行面での困難も多い。過去にも同様なケースが何度かあったものの、一度も実現していない。「日本初の統一戦」が現実となるようないい知恵はないものか。

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