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ヤンキースを支える新星カノーの急成長。 

text by

出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

PROFILE

photograph byYukihito Taguchi

posted2005/08/18 00:00

ヤンキースを支える新星カノーの急成長。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 「次に二塁を守るのは一体誰だ」

 シニカルなニューヨーク・メディアは、新しい二塁手がトリプルAから昇格したばかりだというのに、もう“後任”の話題を持ち出していた。最初の1週間で 23打数2安打。デビュー2試合目には“高価”なエラーも犯した。確かに、22歳のロビンソン・カノーの昇格は早過ぎるようにみえた。バーニー・ウイリアムスの不振もあって外野に転向したトニー・ウォーマックが結局二塁に戻るのではないか、との憶測もあった。5月のことである。ところが、その後カノーは別人のように打ち始め、今や2番打者としてチームになくてはならない存在になったばかりでなく、新人王の有力候補にのし上がる大活躍を続けているのだ。

 「打てなくても悲観はしなかったよ。誰だって一番高いレベルに上がればアジャストに時間がかかる。僕がやるべきことは、常に一生懸命プレーすることだと思っていた」と、ドミニカ出身のカノーは言った。普段はクラブハウスのスタッフ等と、ジョークを飛ばしながらはしゃいでいるが、実際に話してみると、プレーと同様に落ち着き払っている。子どもとオトナが同居しているような印象だが、その実力は成熟したオトナと変わらない。ジョー・トーレ監督の折り紙つきだ。

 「あの若さで高めのボールを打てる選手はなかなかいない。彼の打撃を見ていると、ロッド・カルーを思い出すよ」

 カルーとは、首位打者に7回も輝き、安打製造機と言われた往年の大打者だ。

 「どんな選手だったかは親父(メジャーで6試合登板経験のある元プロ野球選手)から聞いたことはあるけど……。僕の小さい頃からの憧れはバーニー(ウイリアムス)。今、一緒にプレーしているのが夢みたいだし、投手の癖や球種など、いつも的確なアドバイスで助けてくれる」

 チームが高齢化し、世界一から遠ざかるヤンキース。常勝チームであり続けるために生え抜きの有望若手選手を放出し、大物を獲得してきたツケが回っているのは明らかだ。黒人第一号選手ジャッキー・ロビンソンのような素晴らしい人間、選手になれるよう願いを込めて付けられたファーストネームを持つカノーは、そんな状況の中で残留していた例外的存在だ。彼の急成長がチームを救い、しかもチーム作り見直しのきっかけになりそうだ。

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