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“80%”で掴んだV2。アロンソに備わった風格。 

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今宮純

今宮純Jun Imamiya

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photograph byHiroshi Kaneko

posted2006/11/09 00:00

“80%”で掴んだV2。アロンソに備わった風格。<Number Web> photograph by Hiroshi Kaneko

 25歳という若さで2連覇を達成したF・アロンソ。この2年間に14勝。リタイアはたった3レースだけである。自分のドライビングミスは昨年カナダGPで一度きりだ。まさに“セーフティ・ファースト”が彼のレーススタイルなのだ。“あと1ポイント”、最終戦ブラジルGPでM・シューマッハーに勝たれても、8位以内でゴールすればいい。数字上では実に簡単な“V条件”だ。だから250戦目、最後のレースに臨むシューマッハーは「もうドライバーズタイトルは諦め、コンストラクターズのほうに賭けてみる」と腹をくくった発言をした。敗北宣言のようにも聞こえるが、これはいかにもシューマッハーらしい口撃。若いアロンソと彼のチームに対して最後のプレッシャーをかけようとしたのだ。

 ルノー・チームは水曜まで待って週末の天候を睨み、ブラジルGP用ミシュランタイヤ2スペックを選定した。そして金曜朝にアロンソのエンジンをTカーとチェンジした。トラブルが発覚したわけだが、ひとつひとつの部品信頼性実験がフランスのファクトリー内で十分にできたから、念には念を入れてそうしたのである。最終決戦、初日からフェラーリは逆にブンブン飛ばしていった。その中でトラブルが土曜予選前にマッサのギアボックス、予選Q3ではシューマッハーの燃料ポンプ系に起きていた。

 無得点が許されないレースほど難しいレースもない。ミスもトラブルもあってはならない。目標としていた2列目、4番手スタートをものにしたアロンソはどうしたか。スタートから前後左右のマシンの動きを注視し、もらい事故を避け、いつでもかわせる余裕(スペース)を守って走った。交換したエンジンの使用回転数もセーブ。レース後に明らかにしたが、「いつもの80%程度に抑えた」という。それで2位ゴールしたアロンソ。いつもどおりに100%でいったならマッサを抜き、勝っていた可能性は高い。しかし1勝の誘惑を断ちV2達成にのみコンセントレートし続けた。

 踊るようにはしゃぐ母国ウィンのマッサ。テレビ画面は彼ばかりをクローズアップしたが、静かに喜びを噛み締めるアロンソは同じ'81年生まれながらV2王者としての風格を表彰台で漂わせていた。F1ニューリーダーはこの男に決定した。

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