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シアトル41年の歴史に幕。虚しいプロ世界の現実。 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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posted2008/07/24 00:00

 NBAファンにとって、6月が感傷の時だったとしたら、7月はプロスポーツの現実に引き戻された月だった。

 6月17日、名門ボストン・セルティックスが22年ぶりに優勝。初優勝に涙するベテラン選手たちの姿はセルティックスファンでなくても心を打たれた。

 6月26日には、シカゴ・ブルズの黄金時代を見て育ったデリック・ローズが、そのブルズからドラフト1位で指名を受けた。子供のときからの憧れのチームでプレーできることを喜ぶローズの表情は、傍から見ていて微笑ましかった。

 しかし、プロスポーツには冷酷なビジネスの一面もある。

 7月1日、FA選手の交渉解禁。まだ多くの選手が交渉中だが、契約金によって評価や期待度が測られる時期だけに、愛着は脇に追いやってチームを去っていく選手もいるだろう。

 そして今年はFA選手よりもっと大きな決別があった。7月2日、アリーナのリース契約打ち切り問題で係争中だったスーパーソニックスとシアトル市の間で和解調停が成立、ソニックスのオクラホマシティへの移転が正式に決定したのだ。

 感傷に浸るシアトルのファンをよそに、チームはすでに移転の準備を始めた。すでにチームの公式ページからは「シアトル」の文字が消え、「オクラホマシティ」に差し替えられており、7月7日から始まったサマーリーグでも選手たちは「オクラホマシティ」と書かれたウェアを着ていた。

 今回の移転の最大の原因はアリーナ問題。シアトル市所有のキーアリーナは他のNBAアリーナに比べて小さく、収益の中で大きな割合を占めるスイートルームも少なく、チームの赤字を減らすためには改装が必要な状況だった。しかし、すでに地元NFLチームとMLBチームのスタジアムのために税金を払っている住民は、これ以上プロチームに税金を使うことを却下。その結果、オーナーが移転を決断したのだった。

 プロチームであれば、最後は伝統や愛着よりも経営判断が上にくることは仕方がないことなのかもしれない。しかし、セルティックスの久しぶりの優勝で、歴史は繋いでこそ生きるということを感じたあとだっただけに、余計に虚しいプロ世界の現実だった。

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