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何かを持っている男、山井が握る優勝の鍵。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

posted2007/10/18 00:00

 「初登板初勝利とか初打席初安打とか、初めてで結果を出す選手は特別な何かを持っているから大切にしたほうがいい」とは、ソフトバンク・王貞治監督の信念だ。そんな選手として思い出すのは、中日の山井大介である。

 山井の野球人生には、何かと「初」という言葉が付いてまわる。入団1年目に巨人戦で初先発初勝利。2004年の日本シリーズ第4戦では、西武を相手に6回無失点の快投を見せ、シリーズ初登板初勝利をあげた。

 そもそもプロ入りの経緯から劇的だった。'01年、河合楽器時代に都市対抗準決勝で初登板初勝利をあげ、チームの初優勝に貢献した。ところがその年、野球部の休部が決まり、社会人1年目ながら特例措置で中日にドラフト6巡目で入団する。「あと1年遅かったら12球団の注目を浴びていた」という素材だった。

 しかし、中日ではいまひとつローテーションに定着できなかった。フォーム改造が裏目に出たり、右肩痛に悩まされたりして調子を落とし、一軍と二軍を行ったり来たりと遠回り。元来ののんびり屋気質が災いしたのかもしれない。

 今季の中日は、エース・川上憲伸を軸に、朝倉健太、中田賢一が三本柱となり、加えて若手の吉見一起、浅尾拓也の成長で右の本格派がズラリと揃った。これにはさしもの山井も焦っただろう。ターニングポイントとなったのは、8月21日の巨人戦だ。立ち上がり、3四死球で無死満塁と最悪の展開だったが、マウンドに来た落合監督から「もっと勝負しろ」とハッパをかけられてから変わった。6回を1失点で切り抜け、695日ぶりの勝利。それ以降、9月にも巨人戦で2勝をあげ巨人キラーの称号を得た。

 山井は「なんで巨人に勝てるのかわかりません。でも、低目に投げることを徹底したらそう打たれない」と言うが、落合監督はこう評価する。「各チームから平均的に勝って2ケタいく投手よりも、ひとつのチームだけで5勝の投手のほうがクライマックスでは使いでがある」

 今季から始まるクライマックスシリーズ。短期決戦だけに選手起用の微妙なアヤが勝負を左右する。

 落合監督は、この「何かを持っている男」に、秘かな手ごたえを感じているのかもしれない。

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