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有望選手の発掘なるか
戦極のトライアウト。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byKoji Fuse

posted2009/02/26 00:00

有望選手の発掘なるか 戦極のトライアウト。<Number Web> photograph by Koji Fuse

 MMA(総合格闘技)にも本格的なドラフト制導入の兆しか、と思わせる試みがあった。2月1日、戦極が開催したトライアウトがそれだ。

 今回は同イベントに選手を派遣しているパンクラス、和術慧舟會、GRABAKA、吉田道場、シューティングジム東京といった日本の主要MMA組織&ジムの代表が審査員として参加。約70名の志望者の中からダイヤモンドの原石の発掘を試みたのだ。戦極の大号令のもと、5大組織&ジムの要人が一堂に会したところに、このトライアウトの価値がある。

 かつて修斗とパンクラスがイデオロギーの違いから激しく対立した時代もあったが、それも今は昔。慧舟會の久保豊喜代表は「今はどこも大変な時代。業界内でいがみ合っている場合じゃない。真の意味で連帯しなければ」と訴えた。

 応募者は北は北海道から南は沖縄まで総勢121名。日本全国にMMAが広く浸透していることを証明した格好となったが、彼らの肩書きは玉石混淆だった。

 セミコンタクト空手の世界王者、元10回戦のプロボクサーなど他の格闘技で十分な実績を積んだ者もいれば、“38歳の脱サラ”や“元いじめられっ子 ”(肩書き、ではないが)もいたからだ。当日は欠席したものの、応募者リストには先日大麻の所持・吸引で大相撲を廃業したロシア人の本名も記されていた。

 今回はそれぞれ3巡まで指名できるプロ野球のドラフト方式が採用されたため、1巡めと2巡めにはお目当ての育成選手候補がバッティングする場面も。迷った挙げ句、吉田道場を選択した18歳の高校生は、その理由として「中村(和裕)さんのやさしそうな笑顔」を挙げていたのが少年らしくて微笑ましかった。

 最終的に計14名が合格した。私は過去にプロ格闘家を志しながら、アルバイトや遊びにかまけて、消えて行った若者を何人も見ている。そうした失敗を防ごうと、今回の合格者で育成選手として戦極と契約する者には、戦極のスポンサー筋の仕事を斡旋。さらに地方から上京する者に対しては賃貸住宅の敷金や礼金を用意する準備まであるという。プロ志望者にとっては至れり尽くせり。今後も2~3カ月に一度の割合で開催予定の戦極トライアウトは、日本MMAにとって新たな金の鉱脈となる可能性を秘めている。

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