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「リトル」とは呼ばせない。
田中賢介の存在感。
~日本ハムのリードオフマン~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

photograph byTamon Matsuzono

posted2009/12/09 06:00

日本シリーズでクルーンから奪ったバントヒット。'06、'07年は最多犠打を記録したことも

日本シリーズでクルーンから奪ったバントヒット。'06、'07年は最多犠打を記録したことも

 日本シリーズ中に、パ・リーグに詳しくない観客が口をそろえて言っていた。「こんな素晴らしい選手が日本ハムにいたのか」。日ハムのリードオフマンであり、不動のセカンドとして活躍する田中賢介のことである。

 '07年まで二千本安打を達成した田中幸雄がいたため「リトル」と呼ばれることが多かったが、今では誰もそんな失礼な呼び方をしない。ひとたび打席に入れば、スタンドから「ケンスケ」の呼び声がかかる、チーム有数の人気選手に成長した。

680打席、併殺打ゼロ、GG受賞……その活躍はMVP級。

 シリーズで3割6分の高打率を残した田中は、今季パ・リーグ史上最多の680打席に立ち2割8分3厘、史上11人目の併殺打ゼロを記録。さらにリーグ最多の79個の四球、盗塁も31個マークするなど、その活躍ぶりはMVP級と言っていい。

 守備でも4年連続でゴールデングラブ賞を受賞。ショート・金子誠との息のあった二遊間は12球団随一だろう。

 西武の渡辺久信監督は「9番・金子から1番・田中へと繋がる打順、そして二遊間の守り。今季はあのコンビにしてやられた」とシーズン終了後に語っていたものだ。「金子さんには食事をしながら色々教えてもらった」と田中は言い、「守備は好きにならないと上達しないと教えられた」と感謝していた。その金子が股関節を痛め、シリーズ第3戦から欠場し阿吽の呼吸で守れなかった、と敗退後に悔しそうに語る田中の姿があった。

日本シリーズで見せた“研究成果”に巨人スコアラーは脱帽。

 シリーズ前、「よそのチームはダルビッシュ攻略のため色んなことをやってきた。そういうのをメモして、相手チームに実践したい」と話していた。

 成果をまざまざと見せてくれたのがシリーズ第1戦、2点リードされた9回裏。先頭打者の田中は2球目をバントの構えで見送り、3球目にバント。前進してくるクルーンの頭上にプッシュバントをして成功している。これはロッテの西岡剛がダルビッシュ攻略のため、三塁手・小谷野栄一の頭上を狙って、プッシュバントを成功させたことをインプットしていたからできたもの。敵のプレーを、完全に自分のものにして実行したのだ。

 この光景を見て巨人の高田誠チーフスコアラーがしみじみ言った言葉を思い出した。「今の日ハムは田中が引っ張っている」。プロ入り10年目にして、ついに相手チームが恐れる存在になったのである。

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