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伏兵たちが大健闘。だからW杯は面白い。 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byKenji Demura

posted2007/10/18 00:00

伏兵たちが大健闘。だからW杯は面白い。<Number Web> photograph by Kenji Demura

 背中を電流が走った。一時は22点差をつけられたウェールズが4連続トライで逆転し、フィジーは2PGで再び試合をひっくり返す。6度もリードが入れ替わる死闘に決着をつけたのは、椰子の木のエンブレムをつけた15人だった。再々再々逆転トライを奪われた後の残り3分、ゴールライン上の密集で、PRドゥエズがボールをねじ込む。1分近くかかったビデオ判定の末に逆転トライが宣告されると、3万7080人の観衆は一斉にどよめいた。

 フィジッ! フィジッ! フィジッ!

 赤いジャージーを着たウェールズサポーターを除けば、スタジアムにいる人は皆、声を限りにフィジーを応援していた。フランス人の判官びいきもあるだろう。だがフィジーが浴びた声援は、このW杯を象徴していたようにも感じられた。

 今年5月からIRB(国際ラグビー評議会)は、次回W杯では出場国を現行の20から16に削減する案を非公式に流し始めた。表向きは大差の試合を減らし、大会を充実させるため。本音は人口400万人ほどの開催国・NZへの負担を減らすためだった。それは即ち、日本を含めた国際ラグビー第2グループの、世界への扉が閉ざされるリスクを意味する。

 下位国は、その策略に敢然と挑んだ。

 3大会連続で敗者復活戦から勝ち上がったトンガは、過去2度の8強入りを数える隣国サモアを本大会で破り、優勝候補の南アフリカとも最後まで勝負の分からない25−30の死闘を繰り広げた。4年前は豪州に142点を奪われたナミビアはアイルランドに17−32と食い下がり、グルジアは同じくアイルランドを10−14まで追いつめた。すでに強豪国の側に立つアルゼンチンに至っては開幕戦でホスト国フランスを破り、堂々とD組を1位で通過した。

 そしてフィジーはウェールズを破った。

 試合後、ラウルニ主将は「今日の僕らのメンタルの強さは、日本やカナダとの厳しい試合を通じて身につけたものだ」と、下位国同士の戦いが上位国を破る力の源泉になったことを明言。タンブア監督は「我々第2グループの国もこのレベルを経験することで進歩できる。W杯は20カ国で続けてほしい」と結んだ。

 多様性があるからW杯は面白い。その重みを、彼らは体で示してくれた。

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