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棚ボタでめぐってきた初のビッグチャンス。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2008/05/29 00:00

 36歳9カ月の嶋田雄大がプロボクサーの「定年」間際に念願の世界挑戦を決めた。6月12日、日本武道館でWBA世界S・フェザー級戦が行なわれる。

 勝てば日本の世界王者の最高齢記録となるが、「それが僕の一番の話題性じゃないですか」と本人は笑う。1位挑戦者が負傷し代わりに指名された“棚ボタ”を素直に喜ぶが、標的は23戦全KO勝ちの怪物王者エドウィン・バレロだ。当然、相手が悪すぎるという声も多い。

 「でも、私だって何回でKOされるかと言われながらサルディバルに勝ったんだから」と、不利の予想を意に介さないのは、ヨネクラジムの先輩に当たる柴田国明氏。嶋田がそのボクシング理論に共鳴し、三顧の礼で特別コーチに迎えた人である。過去に3度も世界王者になり、このうち2度は海外で、いずれも無敵を誇ったビセンテ・サルディバル、ベン・ビラフロアを倒しての戴冠だった。逆境で世界を掴むのは、柴田、ガッツ石松ら5人の世界王者を育てたヨネクラジムのお家芸である。

 さらに注目すべきは、柴田氏が“サウスポーキラー”としても知られた右ショートの使い手だったこと。上記の二人以外にも多くのサウスポーを倒してきた柴田氏は、「どこをどうすればサウスポーが嫌がるかを、嶋田に教える」と、バレロにとっては不気味なことを言う。

 問題は体重だ。元日本ライト級王者の嶋田がさらに2.3キロ減量して、本来の力を失わないか。嶋田の最初の師匠、バトルホーク風間がまったく同じ冒険に挑み、失敗した光景が思い出されるが、これは28年前のこと。今の嶋田には戦略面の柴田氏とともにもう一人フィジカル面で頼りにするスポーツトレーナー、志水博彦氏がいる。数年前に知り合い、練習だけでなく食事メニューまで作ってもらう。以来、嶋田は食べながら無理せずに体重を落とすことができるようになり、結果も残してきた。S・フェザー級は未知の領域だが心配していないという。

 嶋田は今回を期して4年前からバレロを研究してきた。頭脳的な変則戦法で「バレロをイライラさせてやります」という。ベストでも勝てると断言できないほどバレロは強いが、立ち上がりの一撃さえよけ損なわなければ、案外、過去の誰よりも怪物王者を苦しめるのではないか。

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