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格闘技は若者だけのものじゃないんです。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

PROFILE

posted2005/08/04 00:00

 『OYAZI BATTLE』をご存じか?

 '03年春、「出場資格は35歳以上。日本経済や家族を支えるオヤジ世代に光を」をコンセプトに旗揚げした異色の格闘技イベントである。モットーは“明るく、激しく、安全な格闘技”。1回目こそ観客13名という大赤字興行だったが、回を重ねるにつれ、オヤジ世代の闘争本能に火をつけていった。最近は出場希望者が殺到している状況だ。ブリキオモチャ販売を生業とする37歳(3戦3勝)の話。

 「応援団の歓声、スポットライト、入場テーマ曲での入場、勝ち名乗り……。全てが気持ちいい。普段の生活にはありえない世界ですからね。練習は厳しいけど、一度上がったら病み付きになりますよ」

 噂が噂を呼び、今年からは沖縄でも定期的に大会が開かれるようになり、年内には大阪での開催も決定した。7月18日、東京・後楽園ホールで行なわれた初の国際大会『WORLD OYAZI BATTLE』には、K―1ワールドGP'93優勝のブランコ・シカティック(50歳・クロアチア)やレミー・ボンヤスキーの育ての親として名を馳せるアンドレ・マナート(44歳・オランダ)を招聘。2分2ラウンド制のキックルールで、それぞれ日本の空手家と闘った。

 視線を投げかけただけで相手を萎縮させるシカティックの殺気、未だに現役選手をキャンバスに這わすマナートのボディブローなど、両者とも随所に往年の佇まいや動きを見せてくれたが、スタミナ切れを起こす場面もあった。やはり現実は漫画や映画のようにうまくはいかない。

 極めつけはメインイベントに登場した、'78年に外国人として初めてムエタイ王者となった藤原敏男(57歳・藤原スポーツジム代表)。エキシビションながら、引退後、初めて現役ムエタイ戦士とグローブを交わした。藤原独特のフットワークや裏必殺技だったサバ折りを見せるなど、オールドファンにとってはたまらない模範試合だったかもしれない。

 しかし、試合後に藤原が明かした事実を聞いて驚いた。2週間前、左ヒザ靭帯を断裂。ドクターストップがかかったが、「楽しみにしている人もいるから」と出場を強行したというのだ。できるオヤジは黙って勝負。体力は衰えても闘いに対する姿勢は現役時代のままだった。

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