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有終を飾るのに相応しい、見所満載の最終戦。 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

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posted2004/12/02 00:00

 全日本選手権フォーミュラ・ニッポンのポイントランキングは、シリーズ最終戦が始まる時点で、首位がアンドレ・ロッテラー、2位にリチャード・ライアン、3位に井出有治。この3人が最終戦の結果次第でシリーズチャンピオンになるはずだった。

 スタート位置を決める公式予選でライアンがポールポジションを取ったのに対し、ロッテラーと井出は8位、9位と絶望的な下位に沈み、ライアンは逆転王座獲得に向け有利な位置につけて決勝を迎えた。ところがレースが始まって、事態は大きく変わり始める。給油ピットインの際、ブノワ・トレルイエが鼻先の差でライアンに先行、首位に立った。とはいえロッテラーはまったく生彩がなかったからライアンには2位のままでも王座が見えていた。しかし9位のポジションから、井出が猛烈な追い上げを始めたのだ。

 井出はレース後半、みるみる順位を上げると、ライアンをかわして2位へ進出した。このとき見せた突進は、しばらく語られることになるはずだ。だが、事態はそこからさらに興味深いことになる。というのも、首位のトレルイエと2位に上がった井出は同じチーム・インパルの同僚だったからだ。

 もしチームがトレルイエに「井出に首位を譲れ」と指令を出し順位を入れ替えれば、井出は10点を獲得し3位4点のライアンを追い抜きチャンピオンになれる。トレルイエにチャンピオンの可能性はなかったから、チームにとって順位をコントロールして結果を残すことには大きな魅力があったはずなのだ。

 だが、結局指令は出ず、トレルイエは首位を走ったまま優勝した。井出は2位。ライアンは3位。結果的にライアンはわずか1点差で井出を抑え、ロッテラーとは同点だったものの最終戦上位ということでシリーズチャンピオンに輝いた。ライアンが所属するダンディライアンは国内トップフォーミュラでは新興チームで、この王座獲得は大戦果である。

 一方、「レースはドライバーの勝負」と、チームとしての指令を出さず成り行きに任せ、結果的に王座を逃したインパルの星野一義総監督もまた賞賛されるべきだろう。星野は「今日の井出はチャンピオン以上の走りだった」と言った。この日のインパルもまた、チャンピオンに匹敵するレースを見せたと思う。

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