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世界を本気にさせたハーツクライの剛脚。 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

posted2006/08/17 00:00

 キングジョージVI世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス(芝2400m、GI)。英国王室がロンドン郊外に所有するアスコット競馬場で行なわれる伝統のレースだからこそ許される、重々しいネーミングである。もちろん、レース自体の格も最上級。欧州各国のクラシックで良績をあげてきた3歳馬が、一流の古馬と初めて対戦することで知られ、凱旋門賞と並ぶ欧州の最高峰と位置づけられている。日本の宝塚記念は、このレースを模して創設されたものなのだ。

 ハーツクライ(牡5歳、栗東・橋口弘次郎厩舎)の挑戦は、ホスト国の面々にも小さくない動揺を与えたようだ。ディープインパクトを負かした馬、ドバイシーマクラシックを楽勝した馬と、その名は行き渡っており、大手のブックメーカーは早い時期から3番人気の高い評価。最終的に、当初は2番手の評価をされていたシロッコが回避し、そのかわりにドバイワールドカップの覇者であるエレクトロキューショニストが参戦してきたが、それでも2番人気の支持を集めたのだから、それだけでも快挙と言うことができる。なにしろ、創設以来の55回の歴史のなかで、欧州調教馬以外が勝った例は一度もない。それが、ハーツクライならありえる、と恐れられたということなのだ。例年なら必ずいる、3歳馬の挑戦が見送られたのも、そういう理由があったはずだ。「極東の島国から来た馬にやられた」となったときには、将来の種牡馬価値に響く可能性も考えなければいけない。

 結果は、惜敗の3着。長い直線で一旦ははっきりと抜け出したが、最後は1番人気のハリケーンラン(牡4歳、フランス、昨年度の欧州年度代表馬)と、エレクトロキューショニストの粘り強い末脚に差し返された。コースじゅうにある微妙なアンジュレーションと、足先に絡みつくような重たい芝が、地元の馬に味方をしたということだと思う。着差は勝ち馬から1馬身。優勝したスミヨン騎手がムチの使い過ぎで騎乗停止処分となり、2着のデットーリ騎手も同様に戒告処分を科せられたことから見ても、世界のトップを本気にさせたのは間違いない。橋口師は「JCに来い! 日本でやったら、負けない」と、2強を挑発するセリフで、雪辱を誓ったという。世界にもう一歩まで迫った気持ちが伝わってくる。

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