SCORE CARDBACK NUMBER

本山の「円熟」が牽引するF・ニッポンの今季。 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

PROFILE

posted2007/05/17 00:00

 開幕戦、第2戦と記者会見の席上、松田次生が、エンジニアが変わったことについて、まるでわざわざ付け加えるかのように言及したのが気になった。自身のWEBサイトでもエンジニア交代に関して不安を表明しているところをみると、よほど思うところがあるのだろう。

 確かに、昨年松田次生の活躍を支えたエンジニアは今年、本山哲の担当になっている。同じチームインパル内での異動と言ってしまえばそれまでだが、結果的に本山が同じチームとはいえ自分のライバルである松田からエンジニアを引き離し自分の手元に引き寄せた形ではある。

 モーターレーシングは、ドライバーだけでは戦えない。良い道具はもちろん良い体制を整えてこそ、ドライバーはアクセルを踏み込めるようになる。エンジニアが体制の要であることを本山はよく知っている。しかも今季の本山は、監督に旧友の服部尚貴を据えるなど、自分の意向を前面に押し出し、まるでミハエル・シューマッハーを思わせるほど周到な体制固めをした。本山は開幕前から闘い始めていたのだ。

 シリーズ開幕戦では、昨年度チャンピオンのブノワ・トレルイエが相変わらずの速さ強さを見せて優勝を飾った。だが第2戦で本山が逆襲、なんと1年半ぶりとなる優勝を遂げた。そして獲得ポイントでは松田が首位にいる。なかなか興味深い展開である。本誌が店頭に並ぶ頃には第3戦の結果が出るが、果たして戦況はどうなっていることだろう。

 実は、'73年から始まった日本のトップ・フォーミュラレースシリーズでは、中嶋悟以来、2年以上連続でシリーズチャンピオンになった選手がいない。もしトレルイエが今年もチャンピオンになれば、国内トップフォーミュラレース史上に残る節目になる。一方、もし36歳の本山がチャンピオンになれば、星野一義に次ぐ歴代高齢チャンピオンとして国内レースの王者が健在であることを証明することになる。まさか本山を捕まえて「高齢」と呼ぶ日が来るとは思っていなかったが、円熟を称える言葉としてそのときには許してもらおう。もちろんこのまま松田が逃げ切って初の王座を獲得する可能性も十分にあり、それはそれで大事件になる。今シーズンはどう転んでも、その結末は劇的だ。

ページトップ