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ダルビッシュ株が高騰している理由。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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posted2006/03/09 00:00

 「今年のダルビッシュはいいよ」

 名護の日ハムキャンプを訪れた評論家のほとんどが、あいさつ代わりにこう言う。宮古島のオリックスキャンプで会った江夏豊と東尾修も、ダルビッシュ有の話をしていた。「バランスいいねえ」と江夏が言えば、「あいつは器用だから手首を柔らかく使えるんだよね」と東尾が応じる。

 そんなダルビッシュの目下の悩みは、「実際の自分と周囲からのイメージが違う」ということである。

 「高校時代から、僕は剛速球投手というイメージで見られているけどそれは違う。力で抑えるタイプではないんです。相手をかわして上手にアウトを取りたい。それには遊び球も必要だと思っています」

 力でねじ伏せられないから、タイミングが取りにくい手首の返しと、遊び球の使い方を研究した。甲子園のスター選手たちの多くは、力でねじ伏せたときの快感を忘れられないままにプロに入る。140km台のストレートで今までと同じように三振を獲りにいって壁にぶつかり、自信を失っていく。かつては、荒木大輔(現西武投手コーチ)、桑田真澄(巨人)らも、速球一本にこだわった時期があった。

 そんななか、若いうちから「自分のストレートそのものでは通用しないから、タイミングを考えて投げる」と言ったのは、ダルビッシュぐらいしか知らない。ダルビッシュは、“体のタメ”を作ることで「僕ぐらいのスピードでも十分に生きてくる」と考えているのだ。昨年、西武の涌井秀章らライバルたちを押しのけて、高卒ルーキーでは最多となる5勝をあげることができたのも、この考えるピッチングを続けてきた結果だろう。

 ダルビッシュは、今季から一軍投手コーチになった佐藤義則に「長い間、野球を続けられたのは何をやってきたからですか」と聞いた。40歳でノーヒットノーランを達成し、44歳まで現役を続けた鉄人コーチの答えはこうだった。「走り込んで投げ込んで、右足のタメに耐えられる下半身を作りあげることだよ」。

 鴨川の秋季練習での走り込み、名護キャンプでの生まれて初めてという160球の投げ込みは、ここから始まっている。何をやるべきか理解している選手の成長は、人一倍早い。開幕が楽しみになってきた。

■関連リンク► ダルビッシュ有 「誰にもまねのできないしなやかな強靭さ」 (2008年3月18日)
► ダルビッシュを支えた鎌倉健の心遣い。 (2006年3月9日)

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