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日本記録が世界記録より上に!?
水着騒動、再び。
~入江陵介の記録は“幻”か?~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byGetty Images

posted2009/06/10 06:00

 日本記録が世界記録を上回る――そんな異常事態になりかねない混乱に競泳が陥っている。5月10日、「第1回日本・オーストラリア対抗」の背泳ぎ200mで、入江陵介が世界記録を1秒08上回る1分52秒86を出した。だが、国際水泳連盟(FINA)が「水着に問題がある」と公認を見送る一方で、日本水泳連盟は「基準に合致している」と、日本記録として公認したのである。

 公式大会の記録=公式記録、であったのに、審査を待たなければいけない状況自体が異例だ。原因は水着審査の遅れにある。例年は新開発の水着は年に数回審査され、事実上シーズン開幕前に承認が済んでいた。ところが今季は、各地で大会が進行していた5月中旬にようやく世界中の各メーカーから申請の出ていた348タイプの審査結果を発表。136タイプを再提出扱いとし、10タイプを却下したが、入江の着用したデサント製品もルールに抵触する恐れがあると再提出リストに含まれたのである。FINAは審査の詳細を明かしていない。そもそも、今季変更されたルールでは具体的にどういう科学的数値が求められるかなどの説明がメーカー側になかったという。

混乱を招いたFINAの“ダブルスタンダード”。

 水着といえば、昨年、英スピード社の「レーザー・レーサー」が衝撃を与えた。同社はFINAの公式パートナーだが、一昨年末のルール改正後ほどなくレーザー・レーサーが発表され、「出来レースではないか」と疑念がもたれた。今回もスピード社絡みの疑いがささやかれる。FINAの基準が明確さを欠くからである。

 今後、メーカーは30日以内に改良し再提出するが、その結論次第で世界記録と日本記録が食い違うことになる。FINAの不手際ではある。それでも、世界というひとつの舞台で、タイムを物差しに戦う以上、ふたつの基準を作ってはならないのではないか。でなければ、混乱をのちのちまでひきずりかねない。

世界記録をつくるのは水着ではない!

 水着による騒動は昨年から2年続いているが、どんな水着だろうと力のない選手に記録は作れないし勝負には勝てない。それが原点であることにかわりはない。

「悔しいけれど、もう一度世界記録を作るチャンスをいただいたと思っています。水着の影響じゃない、と必死に努力している選手の姿を見てほしいです」

 渦中にいる入江の言葉である。

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