SCORE CARDBACK NUMBER

若きライバルの存在が、さらに横綱を強くする。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

posted2005/08/18 00:00

 横綱・朝青龍が歴代単独6位となる13回目の優勝を、自身初の5連覇で飾った。

 1年間で最も暑い名古屋場所は、朝青龍にとっても難関の場所だった。'03年は調整に失敗して初の途中休場。'04年も自身初の4場所連続優勝こそ果たしたが、終盤戦では連敗。中日の琴ノ若戦では取り直しになったものの、土俵中央で裏返しにされる屈辱を味わわされている。

 今場所も、今年初めての2敗を喫し、久しぶりに千秋楽まで優勝争いを持ち越した。控えの土俵下で2敗を並走していた琴欧州が敗れるのを見た朝青龍は、最後に横綱の本領を発揮した。今場所一番の気合に満ちた表情で、次々に繰り出した攻撃相撲の数々。みなぎる闘志と緻密な計算をブレンドし、相撲巧者・栃東の持ち味を完全に封じ込んでの完勝劇だった。最後は落ち着くところに落ち着いた優勝だったが、競り合った分だけ朝青龍の喜びも爆発。勝負が決した直後の土俵上でのガッツポーズから、支度部屋に戻って大銀杏を整え表彰式にむかっても、興奮冷めやらぬ状態は続いた。

 ライバル不在、勝ち慣れから生じるマンネリ感。強すぎる横綱ゆえの悲劇であろうが、最近は身体の芯から燃えたぎるものが不足している感じで、場所前の稽古量も万全とは言いがたい状況が続いていた。不完全燃焼のマイペースの中、今場所も7日目にして単独トップ。あっさり逃げ切ると思われたが、これまでまったく問題にしなかった琴欧州・黒海戦で黒星を喫する不測の事態が起きた。手を付くことなく頭から突っ込み、下手投げを打った琴欧州戦。ダイビングしながら両手を引き上げアゴと腹から土にのめり込んだ黒海戦。ともに物言いのつくきわどい一番だったが、この瞬間、朝青龍は勝負師に戻り、忘れかけていた極限状態の緊張感、危機感の中で戦うことの楽しさや面白さを呼び起こしたに違いない。終盤戦、久々の追われる身を実感しての相撲に、朝青龍が日毎に集中力を増し、相撲を心底から楽しんでいるかのように私には思えた。

 前人未踏の年6場所完全制覇がにわかに現実味を帯びる中、後方から若手の足音が聞こえてきた。勝負師の原点に戻った朝青龍が再びかつての猛稽古を復活させるか。その決断を見守りたい。

ページトップ